「豪華な設備と手厚い医療があれば、幸せな老後は約束されるのか。」入居金6000万円、海を望む高層階、高級ホテル並みの共用施設、親切なスタッフ、充実した医療体制。それでも著者は、わずか2年で超高級老人ホームを去ることになりました。本書は、その入居から退去までの顚末を通して、老後の住まい、孤独、自由、そして人間関係の本質を問いかける体験記です。

本日紹介するのは、1944年東京都生まれ。1971年にジャズ喫茶・烏山ロフトを開業した後、下北沢や新宿などにロック・フォーク系ライブハウスを次々とオープン。1984年から海外でバックパッカー生活を送り、ドミニカ共和国で市民権を獲得。帰国後の1995年には、初のトークライブハウス「ロフトプラスワン」を開業し、ネイキッドロフト、阿佐ヶ谷ロフトAなども手がけた、日本屈指のライブハウス「ロフト」創業者平野悠さんが書いたこちらの書籍です。

平野悠『超高級老人ホームに入ってみた』(集英社新書)

本書は、千葉県鴨川市にある入居金6000万円の超高級老人ホームへ実際に入居した著者が、豪華な施設での暮らしや富裕層の住人たちとの交流、そこで感じた孤独や違和感、そして退去を決断するまでを率直に綴ったノンフィクションです。

 

本書は以下の4部構成から成っています。

1.「やすらぎの郷」を求めて

2.ここは天国か?

3.海と孤独と自由と

4.そして、ホームを出る

 

本書の前半では、著者が超高級老人ホームを選び、入居するまでの経緯と、そこで目にした恵まれた生活環境が紹介されています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 海が見える高層階の居室など、理想的に見える住環境

◆ 食堂、バー、図書館、露天風呂、ジムなど充実した共用施設

◆ 高級ホテルを思わせるサービスと親切なスタッフ

◆ 提携病院による手厚い医療サポート

◆ 老後の不安を解消してくれそうな安心感

 

この本の中盤では、恵まれた設備だけでは満たされない、入居者たちの孤独や人間関係の難しさが描かれます。主なポイントは次の通り。

◆ 富裕層の住人が抱える、それぞれの事情や孤独

◆ 豪華な暮らしの中でも生まれる閉塞感

◆ 入居者同士の距離感やコミュニティ形成の難しさ

◆ 自由に見えて、実は制約も多い施設生活

◆ 海を眺めながら考える老いと人生の意味

 

本書の後半では、著者がホームを離れる決断に至った理由と、老後の住まいを選ぶうえで本当に大切なものが語られます。主なポイントは以下の通りです。

◆ 設備やサービスだけでは幸福は決まらない

◆ 自分らしく動ける自由が生活満足度を左右する

◆ 人とのつながりや社会との接点が不可欠である

◆ 安心と引き換えに失うものもある

◆ 老後の住まいは自分の価値観で選ぶ必要がある

 

本書で最も印象的なのは、「不満がないこと」と「幸せであること」は同じではない、という点です。施設は豪華で、食事も医療も申し分なく、スタッフも親切です。客観的に見れば、老後の住まいとしてこれ以上ない環境に思えます。

それでも、著者の心は満たされませんでした。その理由は、老後の幸福が設備や資産額だけでは決まらないからでしょう。

自宅で暮らしていても、人との交流や外出の機会がなくなれば、同じような孤独に陥る可能性があります。

逆に、住まいが質素でも、気の合う仲間がいて、好きな仕事や活動を続けられるなら、満足度の高い老後を送れるかもしれません。ただし、「高いお金を払えば幸せな老後が買える」と考えることには注意が必要だと教えてくれます。

老後の住まいを考える際には、費用、設備、医療、介護体制だけでなく、自分がどのような毎日を送りたいのかを具体的に考えることが大切です。そうした生活全体の希望と住まいが合っているかどうかが、老後の幸福を大きく左右します。

私自身も、人生100年時代のライフスタイルは「住む場所」「付き合う人」「時間配分」の三つで決まると考えています。本書の体験は、まさにそのことを示しています。

老後の住まいを考えている方、親の施設選びに悩んでいる方、定年後の居場所や人間関係を見直したい方、そして「豊かな老後とは何か」を考えたいすべての方に、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4175日目】