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菊池真『円安恐慌』(日経プレミアシリーズ新書)

菊池真氏は、早稲田大学を卒業後、日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)に入行し、複数の外資系投資顧問会社にて運用を担当した後、独立した。

 

本書は、2012年11月に書かれているが、円安へのトレンド転換がいつ起きて、その時の日本経済へのインパクトを説得力ある説明とともに紹介している衝撃の書だ。

 

2014年9月現在、膠着状態になっていたドル円相場が、米国経済の好調さを受けて1ドル=106円台へ一気に円安に進み始めたところだ。本書の分析の正しさが今、証明されようとしている。

 

では、本書の構成について、以下の8つからなることを述べておこう。

 

1.日本の財政の 「不都合な真実」
2.円高進行継続か円安反転か
3.円安進行がもたらすもの
4.国債価格下落(金利上昇)が日本の金融システムに与える影響
5.そして円安が始まる
6.日本発の世界金融危機を回避するには
7.円安時代の日本の復活シナリオ
8.激変を乗り切る資産運用

 

本書では、円安へのトレンド転換をするポイントは、米国金融政策の転換であると指摘している。米国の経済指標が景気回復を裏付ける数字が続いたことから、間もなく米国の金融緩和が縮小されるとマーケットは見始めた。

 

現在の急激な円安進行は、本書で予言した通りのキッカケにより始まったと言ってよい。当面、この流れは変わらないだろう。爆弾を抱えるEUについては、ドルほど強くはならず、ユーロと円の関係は現状では何とも言えない。

 

本書の後半では、円安への転換が進んだ後に、日本経済へ与える影響が分析されている。金融緩和は世界的に行われていることから、株式相場の急騰やインフレの懸念が出てくる。

 

日本に関しては、国債相場の下落と金利上昇が、最も留意しなくてはいけない影響だろう。菊池氏は資産運用のプロであるため、最終的にはどんな変化が起ころうとも、運用によって危機を乗り越えられると説いている。

 

現代の世界経済は変化が激しく予測も難しい。本書はそうした中にあって、経済理論と国際金融実務の両方に詳しい著者の見識は本書を読むことでよくわかる。予測に強くなりたいビジネスパーソンにはぜひ一読を薦めたい。