書評ブログ

園善博 『すぐに頭がよくなる「超速」勉強法』 (講談社BIZ)

本日も4日連続での園善博氏の著書で、今回は 「勉強法」 に焦点を当てた書を紹介したい。本書は、これまで園氏が開催してきた 「速習法」 セミナーの内容を十分に理解できなかった受講者たちからの声を参考に、そうした人たちでも理解できるように易しく説明した書だ。

本書で焦点を当てている 「超速」 勉強法は、「学習内容を効率よく記憶する(覚えて、使いこなす)」 ための勉強法だ。試験の合格に向けた 「より具体的な暗記術」 に踏み込んでいるのが特徴だ。

本書のあとがきにも書いている通り、本書では 「できるだけ専門的な表現をせず、かみ砕いて、いままで著者が書いてきたどの本よりも、わかりやすく表現する」 ことを心がけた、という。

また、脳のしくみや理論を、微に入り細に入り説明するよりも、「実際に体験してもらったほうが、効果がわかりやすい」 と考え、「速習セミナー」 で好評のエクササイズを多く掲載している。

勉強を始める前に知ってほしいこと、効率よく勉強を進めるために知ってほしいこと、短時間で覚えるために知ってほしいこと、それらの知ってほしいことをまとめたのが本書だ。

本書は、大きく以下の3部構成になっている。

1.「記憶のしくみ」 がわかると勉強はどんどんはかどる
2.「ワーキングメモリ」 を鍛えればどんどん暗記できる!
3.「勉強する範囲」 がわかれば短時間でどんどん覚えられる!

本書で、説明していることの中心は 「記憶のメカニズム」 だ。それを理解することで、効率的に暗記する 「勉強法」 が習得できる。

記憶は、「短期記憶」(数十秒~数分程度) から、中期記憶(1ヶ月程度)へ、そして 「長期記憶」(数ヶ月~一生) へと移行していくものだ。見たり聞いたりしたものの大半は、「長期記憶」 まで辿り着けずに忘れられてしまう。

できるだけ、長期記憶を増やそうと思えば、まずは短期記憶の能力である 「ワーキングメモリ」 の容量を増やすことが大切だ。そして、中期記憶として保持するには、復習をすることだ。

そして、できるだけ長期記憶として定着するまで、復習を繰り返す必要がある。さらに、忘れにくくする仕掛けとして、感情や体験と結びつけた記憶にする、ということだ。

長期記憶には、①意味記憶、②エピソード記憶、③手続き記憶、の3種類があって、体験や感情を伴う記憶は二番目の 「エピソード記憶」 だ。また、三番目の手続き記憶とは、自転車の乗り方や水泳など、体が覚える記憶で、これも忘れない。

五感を使って暗記する方がよい、あるいは目で見るだけの読む記憶よりも、音読して耳からも記憶する暗記の方が効果が高い、というのは以上の理由によるものだ。

著者のセミナーで提唱する 「速習法」 は、脳科学や認知心理学といった科学的アプローチにより、組み立てられたメソッドだが、本書はその理論を専門用語を極力使わずに、分かりやすく解説している。

これまで4日間連続で、園善博氏の著書を紹介してきたが、本書はその仕組みの 「タネ明かし」 となる、まさに入門書と言えよう。これまでの推薦本が今ひとつ、取っつきにくい人は、本書から読むことを薦めたい。