「銀行やそこで働くバンカーとはかつてと今とで大きく変わった。幅広い世代に『銀行とは何か』『バンカーとはどんな生き物か』を尋ねても答えが収斂しなかったのは当たり前である。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1966年東京都生まれ、慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本経済新聞社に入社、電機、電力、商社、ゼネコン、銀行、証券等の各業界を取材、編集委員、『日経ビジネス』副編集長を経て独立したジャーナリストの秋場大輔さんが書いた、こちらの書籍です。
秋場大輔『ヤメ銀 銀行を飛び出すバンカー』(文春新書)
この本は、時代ごとのバンカーの自画像を浮き彫りにし、変化の軌跡が環境変化に相応しいものだったのかを検証している書です。
本書は以下の3部構成から成っています。
1.バンカー像の変遷
2.ヤメ銀だから今の自分が在る
3.銀行も変わる
この本の冒頭で著者は、「世の中には銀行の変遷を辿った『銀行史』は山ほどある。しかし『バンカー史』はない。」と述べています。
本書の前半では、「規制金利時代(戦後~1970年代)」「自由化・バブル時代(1980年代)」および「バブル崩壊直後(1990年~1995年ごろ)」について説明しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 品行方正なエリートで社会的地位が高かったバンカー
◆ 行員の能力を判断する物差しは「人を見る目」
◆ 独創性よりも失敗しないことが求められる
◆ プラザ合意のあった1985年を機に「自由化」と「競争」の価値観
◆「上意下達」と「横並び意識」
◆ バブル崩壊直後に銀行が直面した闇勢力との関係を断つこと
◆ 不良債権処理を巡って銀行と監督官庁との対立
◆ バブル崩壊後も銀行の社会的地位の高さは維持された
この本の中盤では、「金融暗黒時代(1996年~1998年)」「金融大再編時代(1999年~2010年)」および「フィンテック時代(2011年~現在)」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ バブル崩壊直後に銀行が直面した闇勢力遮断と住宅金融専門会社の処理
◆ 三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券が経営破綻、日債銀・日長銀も消滅
◆ 不良債権処理で金融システム崩壊、単独で生き残れる金融機関はなくなる
◆ バンカーの人生は多様化
◆「金融検査マニュアル」で不良債権処理が加速、銀行の身勝手さが露呈
◆ リーマンショックで世界中の金融機関に大きな影響
◆ 金融テクノロジーが共創軸になるフィンテック時代に
◆ メガバンクの支店網縮小、近代銀行誕生150年で銀行のカルチャーは変わらず
本書の後半では、「IT業界に身を寄せて」「社会正義に生きる」および「『誰とでも会える』を実践」ついて、以下のポイントを説明しています。
◆ IT業界に転身した山田理(旧興銀)と武市智行(四国銀行)の活躍
◆ アルバ・エデュを起こして小中学生のプレゼン能力を高める竹内明日香(旧興銀)
◆ 長銀から横瀬町長に転じた富田能成
◆ 武蔵野東学園の理事長として理想的な教育を実現した寺田欣司(旧三和銀行)
◆ タリーズ・ジャパンを創業した松田公太(旧三和銀行)
◆ 旧大和銀行専務からタイガースの応援団に入った國定浩一
◆ IT業界に求められて転身した佐藤義清(旧第一勧銀)
◆「バンカーの世界は広い」は幻想、行動範囲は極めて狭い
この本で描く銀行を飛び出すバンカー像は、拙著『銀行員転職マニュアル 生き残る銀行員の「3つの武器」を磨け』(きずな出版)で提唱しているコンセプトと共通する部分が多く強く共感しました。ぜひ併せて読むことをお薦めします。
この本の締めくくりとして著者は、「追悼・三井住友フィナンシャルグループ 太田純前社長」を掲載しています。
あなたも本書を読んで、「バンカーの知恵」を武器に戦った異端者たちをヒントに、自らのキャリア後半を考えていきませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3382日目】