書評ブログ

『クランボルツに学ぶ 夢のあきらめ方』

「常識を疑う」ことを信条とする人事・雇用のカリスマが、「夢はあきらめるとけっこうかなう」という一見矛盾した結論を導いているキャリア論の古典にして決定版「クランボルツ理論」について、わかりやすく解説している本があります。

 

 

本日紹介するのは、リクルートグループで20年以上の経験を持ち、「人事・雇用のカリスマ」と呼ばれる、雇用ジャーナリスト海老原嗣生さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

海老原嗣生『クランボルツに学ぶ 夢のあきらめ方』(星海社新書)

 

 

この本は、お笑い芸人を事例として、「夢はかなわない」と揃って言っている「お笑いビッグ4」、すなわち、たけし、明石家さんま、タモリ、ダウンタウン松本の4人の言動を、どう解釈したらよいかについて、クランボルツ理論に即して説明しています。

 

 

 

本書は以下の6部構成から成っています。

 

 

1.夢はいつだってまた見つかる

 

2.夢はけっこうかなう、という事実

 

3.仕事での成功は難しくない

 

4.夢の代謝サイクル

 

5.5条件取扱いの注意

 

6.「才能と成功」の解

 

 

この本の冒頭で著者は、「お笑いビッグ4」のインタビューでの発言を紹介し、その共通点を指摘しています。

 

 

◆ たけし「オレは “ 夢はかなう ” という言葉が嫌い。夢はかなわないよ。(中略)ただ生きることが一番大切であって、負け続けることも大切だと思う。思うことがすべてかなっちゃったら、人生はつまらない。」

 

◆ タモリ「かなうものは叶う。叶わないものはかなわない。そう決まっているのだ。」

 

◆ 明石家さんま「努力は報われると思う人はダメですね。」

 

◆ ダウンタウン松本「僕らって努力じゃないんですよね。(中略)『山の頂上に登る』っていうんじゃなくて『山の頂上にいることを知ってもらいたい』みたいな感覚が僕はあるような気がするんですけどね。」

 

 

さらに本書では続けて、NBAのスーパースターであるマイケル・ジョーダンですら、「プロ野球メジャーリーグ選手になる」という夢をかなえられなかったことを紹介しています。

 

 

つまり、「夢はかなわない」ということです。

 

 

しかしながら、ここで「クランボルツ理論」、すなわち、「計画的偶発性理論(=Planned Happenstance Theory)」における「2つの定理」を以下の通り、紹介しています。

 

 

1.夢や趣味や目標は、どんどん変わっていく

 

2.夢や趣味や目標は、そのほぼすべてが偶然のきっかけから始まり、そのきっかけは周囲の人たちがもたらす

 

 

したがって、出会い→影響→発見→変化というプロセスをいかにたくさん作っていくかが「クランボルツ理論」では大切だ、と言います。

 

 

つまり、「キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」ということなのです。

 

 

クランボルツ「計画的偶発性理論(=Planned Happenstance Theory)」は、こちらの本に詳しく書かれています。原書も併せて紹介しておきます。

 

 

 

次にこの本では、計画的に偶然の出会いを増やし、そこから「夢の種」を導き出すために、どのような行動をしていくのがよいか、について、クランボルツが挙げる「5つの条件」を以下のように示しています。

 

 

1.好奇心(Curiosity)

 

2.持続性(Persistence)

 

3.柔軟性(Flexibility)

 

4.楽観性(Optimism)

 

5.冒険心(Risk Taking)

 

 

要するに、好奇心(面白い)⇒冒険(やってみよう)⇒楽観(大丈夫)⇒持続(納得いくまで)⇒柔軟(テングにならない)という流れが、「計画的偶発性理論(=Plannned Happenstance Theory)」と言える、と著者は述べています。

 

 

この中でも私は、第一歩を踏み出す「好奇心・冒険心の組み合わせ」と、「楽観的に考えて持続する」という姿勢、と言うか「習慣」にしてしまうことが、成功するキャリアを築くポイントだと考えています。

 

 

とくに楽観性を持って持続するには、「成功曲線」の存在を知識として、あるいは経験から知っていることが重要です。何ごとも、行動してしばらくするとずっと伸びない時期が続き、ある日突然、上達の角度が上がって加速度的に結果が出る、という成功のカーブです。

 

 

私は、経営コンサルタント石原明さんの、こちらの著書で、「成功曲線」を詳しく知りました。

 

 

 

そして、本書では後半に、売れっ子になってテングになったタレントがすぐに消えてしまう例を挙げ、好奇心と柔軟性を維持して、さまざまなジャンルの仕事に謙虚な姿勢で挑戦し、仕事の範囲を広げる成長を遂げたタレントとの違いを明らかにしています。

 

 

柔軟性を持って新しい仕事に挑戦した人には、良い機会や出会いが訪れて、さらに成長して新たなキャリアを築いていくという好循環が起こります。

 

 

そういう場面を外側からだけ眺めて、「あいつは運がいいだけ」という批判もありますが、それは事のうわべだけしか見ていない、と著者は指摘しています。

 

 

本書の後半では、「夢は生煮えのままだと厄介」、「代謝すべし」と唱えています。

 

 

「夢を代謝する」とは、以下のプロセスで行動することです。

 

 

1.まず踏み出すこと。踏み出すには、冒険心や好奇心や楽観性が必要です。

 

2.そして一から始める。これは柔軟性が必要です。

 

3.そして、続けること。これは持続性。

 

 

先に紹介したマイケルジョーダンがメジャーリーガーに挑戦した行動は、「夢はかなわない」という証明ではなく、キャリア理論で言えば、「夢は代謝すべし」と受け止めるべきだ、と本書では説明しています。

 

 

以上の説明を踏まえて、クランボルツの「計画的偶発性理論(=Plannned Happenstance Theory)」は、次の3幕構成だと、著者は結論を記しています。

 

 

第1幕: 夢はまた見つかる

 

第2幕: 夢はけっこうかなう

 

第3幕: だからきちんと代謝すべし

 

 

つまり、「夢はかなわない」ではなく、「賭け金を払い、代謝しろ」が、本当の意味だとしています。賭け金を払うとは、「一生懸命頑張ること」です。

 

 

そして、「一生懸命頑張っている状態」を続けて、一つの仕事をやり切っても結果が出ないときは、その夢は消化して、次の仕事や夢に向かうのです。それが本書でいう「夢の代謝」です。

 

 

この本の最後にもうひとつ、興味深いことが書かれています。それは、できるかできないかギリギリの目標のチャレンジすると成長する、ということ。

 

 

そして、この「できるかできないかギリギリの目標」とは、以下の2点が満たされることです。

 

 

1.生かし場が含まれていること

 

2.逃げ場がないこと

 

 

ここでいう「生かし場」とは、自分の経験、知識、キャラクター、コネクションなど、何かしら過去の財産が生かせる、ということ。

 

 

そして、「逃げ場のない」状態にして、真剣に困難に立ち向かえば、道は開けるのです。そして、この2つを満たすのは、身勝手な冒険ではなくて、「相手からもらった無謀とも思える機会を生かす」ことだそうです。

 

 

他人が自分に機会を用意してくれる場合、「生かし場が含まれている」からこそ、声をかけてくれるのです。だからこそ、自分から挑戦していくよりも、「相手から声を掛けられた機会」というものを大切にすべき、という結論になります。

 

 

これこそが、クランボルツ理論の真髄でもあるでしょう。あなたも本書を読んで、クランボルツに学ぶ「夢のあきらめ方」を身に着けませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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