書評ブログ

『生き残りを賭けたトヨタの戦い、日本の未来』

「ハードとしてのEVをつくることは出発点に過ぎず、本当の問題はEV化だけではなく、それに伴って起こりつつある『知能化』にあり、最終的にはAIを搭載した完全自動運転につなげていく道程こそが勝負なのだ。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、1961年生まれ、一橋大学商学部を卒業、中央大学大学院経営戦略研究科修了、1985年にトヨタ自動車に入社して宣伝部、商品企画部、海外駐在(タイ、シンガポール)などを経て、レクサスブランドマネジメント部部長となり、54歳で退職し独立起業して、現在はコンサルティング講演活動などを行うブランディングコンサルタント、A.T.Marketing Solution代表の髙田敦史さんが書いた、こちらの新刊書籍です。

 

髙田敦史『生き残りを賭けたトヨタの戦い、日本の未来。本当の勝負は「EV化」ではなく「知能化」だ!』(集英社インターナショナル)

 

この本は、自動車業界に詳しくない人にもクルマの電動化や知能化について理解してもらい、日本を代表する自動車会社であるトヨタの今後の戦略について論じている書です。

 

本書は以下の6部構成から成っています。

1.「生き残りを賭けた戦い」が始まる

2.テスラとBYDはなぜ急成長できたのか

3.トヨタの戦略と課題

4.電動化×SVD時代にクルマはどう変わるのか

5.トヨタへの提案

6.日本企業はミュータントエコノミーを目指せ

 

この本の冒頭で著者は、「トヨタのようなリーダー企業にとって最大の脅威は市場環境が変わることである。EV化はその始まりに過ぎず、その後に来る知能化によってクルマのあり方が大きく変わる可能性が高い。」と述べています。

 

本書の前半では、「生き残りを賭けた戦いが始まるおよび「テスラとBYDはなぜ急成長できたのか」について以下のポイントを説明しています。

◆ 今後はデータとAIが競争力の源泉になる

◆ ソフトウェア・ディファインドでイノベーションが加速

◆ 自動車業界にも、CACEなど「新市場型破壊」の新しい波

◆ SDV(Software Defined Vehicle)という第2波でAIによるクルマの知能化

 

◆ テスラの強みは、EV三重苦を単独で打破した収益力

◆ テスラの「ギガプレス」、オンライン販売、充電設備の開放

◆ BYDの強さは、出自からくる「電池内製化率100%」の技術力

◆ テスラとBYDの共通点は、垂直統合型による変革スピード

 

この本の中盤では、「トヨタの戦略と課題および「電動化×SVD時代にクルマはどう変わるのか」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

◆ EV化にブレーキをかける保護主義の動き

◆ 2030年までに30車種でEV350万台(EV比率30%以上)販売のトヨタの計画

◆ トヨタの「マルチパスウェイ戦略」は、FCEV(燃料電池車)や水素エンジン車も

◆ トヨタが進める技術・生産の改革は、車載電池・プラットフォーム・車載OSの刷新

 

◆ SDVで高まるAIの重要性

◆ 自動運転技術の向上とEVのエネルギー管理がポイント

◆ 顧客情報の開発へのフィードバック

◆ 社内での顧客体験の創出:EVノマド、増築感覚で車を買う、移動時間も仕事

 

トヨタの戦略は、ポーターの競争戦略理論でいう業界トップのポジショニングに基づいた「コストリーダーシップ戦略」であり、すべての分野でトップを目指す(総合主義を掲げる)ランチェスター戦略の「強者の戦略」にも則る王道の戦略と言えるでしょう。

 

本書の後半では、「トヨタへの提案および「日本企業はミュータントエコノミーを目指せ」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ ロボタクシー事業への進出

◆ テスラとの再提携で西側メーカー最強タッグに

◆ IT企業の受託生産を行うEMSを新事業に

◆ SDV時代のレクサスブランド再定義

 

◆ トヨタチームで低価格EVを開発

◆ CCS、CCUSなどCO2回収技術でハイブリッド車を継続販売

◆ SDV時代の「幸せの量産」に向けクルマ屋からの脱皮

◆ 突然変異種をバックキャストで発送する日本型「ミュータントエコノミー」を

 

この本の巻末には、「次世代自動車キーワード61」が掲載されていて、自動車業界以外の読者でも理解を深めるのにとても有益です。

 

あなたも本書を読んで、元トヨタ・レクサスブランドマネベジメント部長の著者が提唱する「クルマの未来」を学び、「EV化」ではなく「知能化」の勝負となる自動車産業や日本のものづくりの生き残りを賭けた戦いについて考察してみませんか。

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3549日目】