「未来の日本を見たいなら、若者よりも60代に目を向けよう。」― これまで一括して「シニア」と呼ばれてきた世代の中でも、現在の60代は、70代以上とは異なるデジタル行動や消費意識を持ち、「引退世代」と「現役世代」の狭間で新しい生き方を切り拓いています。本書は、この世代を「令和シニア」と定義し、Z世代を中心とした若手マーケターの視点から、これからの社会と市場の未来を読み解いた一冊です。

本日紹介するのは、博報堂のフィロソフィーである「生活者発想」を基盤として、データ分析や生活者インサイトからマーケティング戦略、新規事業開発、社会課題解決までを支援する株式会社博報堂ストラテジックプラニング局と、高度な運用力、技術開発力、戦略立案力、クリエイティビティを強みに、博報堂DYグループのデジタルコアとして統合型マーケティングサービスを提供する株式会社Hakuhodo DY ONEが書いた、こちらの書籍です。

株式会社博報堂ストラテジックプラニング局・株式会社Hakuhodo DY ONE『THE FRONTLINE GENERATION 令和シニア なぜいまZ世代マーケターは60代に「未来」を見るのか?』(宣伝会議)

 

本書は、60代を従来の「高齢者」「引退世代」という枠組みで捉えるのではなく、現役世代との連続性を持ち、デジタルを活用しながら新しい働き方、暮らし方、消費スタイルを開拓する「最前線世代」として捉え直しています。

 

本書は以下の6部構成から成っています。

1.なぜいま“令和シニア”に着目するのか

2.“令和シニア”はこうして生まれた

3.令和シニアの価値観の現在地――データから読み解くインサイト

4.令和シニア×デジタルマーケティングの勝ち筋

5.実例を通じて読み解く――令和シニアから広がるビジネスチャンス

6.令和シニアを羅針盤に、新マーケットを見立てる

本書の前半では、なぜ今、60代を「令和シニア」として捉える必要があるのか、その社会的背景と世代形成の過程について、以下のポイントを中心に解説しています。

◆ シニア市場の実像や有効なマーケティング手法は、まだ十分に体系化されていない

◆ スマートフォン保有率やデジタル利用行動を見ると、60代と70代の間には明確な違い

◆ 現在の60代は、高度経済成長、大量消費社会、個人化、デジタル化など、日本社会の大きな変化の最前線に直面してきた世代

◆ 幼少期から大量消費社会を経験し、若年期には「個の時代」、壮年期には家族像や働き方の変化に向き合いながら、価値観を柔軟に更新

◆ 新しいものを受け入れる柔軟性と、過去の経験を活用する判断力の両方を備えている

 

この本の中盤では、データ分析を通じて明らかになった令和シニアの価値観、キャリア意識、消費行動、デジタルマーケティングのポイントが紹介されています。主なポイントは次の通り。

◆ 令和シニアは生涯現役への意識が高く、引退後の余生を過ごすのではなく、仕事や学びを続けながら人生を主体的に楽しもうとしている

◆ 周囲との調和を重視しながらも、新しいことに挑戦する意欲があり、若い世代から学ぶことにも積極的で柔軟な姿勢を持っている

◆ 消費では、商品の機能や価格だけでなく、ブランドの背景、つくり手の想い、購入によって得られる体験に価値を見いだす傾向が強い

◆ マスメディアとデジタルメディアの両方を行き来しながら情報を集めるため、広告から購買までの体験を分断させない設計が重要になる

◆ 60代を一つの均質な集団と見なさず、多様な価値観や生活状況を可視化し、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを行う必要がある

 

本書の後半では、企業事例を通じて令和シニア市場の可能性を示すとともに、60代を起点として未来の社会やマーケットを予測する方法を解説しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ KDDI、オースタンス、エイジレスなどの事例から、令和シニアの課題を解決する商品やサービスが、他の世代にも広がるビジネスチャンスになることを示している

◆ 令和シニアを特殊な高齢者市場としてではなく、これから社会全体に広がる価値観を先取りする「未来を見通すレンズ」として捉える

◆ 健康への意識は、病気を完全に予防することだけでなく、体調を調整しながら生活を楽しむ「帳尻合わせ型」へと変化していく

◆ キャリアは、一つの会社で定年まで勤める形から、定年後も複数の仕事や活動を渡り歩く「定年後ジョブホッピング社会」へ移行する

◆ 人とのつながりやブランド選択も、固定された所属や社会的ステータスから、期間限定のプロジェクトや企業の想いへの共感を軸とする形へ変わっていく

 

本書で最も興味深いのは、60代を「過去の価値観を持つ世代」ではなく、「未来の生き方を先取りする世代」として捉えている点です。

これまでシニアマーケティングといえば、健康食品、介護、相続、終活など、年齢による衰えや不安を前提とした商品・サービスが中心でした。

しかし、現在の60代の多くは、スマートフォンを使い、SNSや動画を見て、オンラインで情報収集や買い物をしています。

仕事を続ける人もいれば、定年後に起業する人、副業を始める人、地域活動や趣味のコミュニティに参加する人もいます。

本書のタイトルにある「THE FRONTLINE GENERATION」とは、現在の60代が、長寿化、働き方の多様化、デジタル化、家族関係の変化といった社会変革の最前線に立っていることを意味しています。

私は、「ライフスタイルは、住む場所、付き合う人、時間配分の三つで決まる」と考え、人生100年時代の定年後ライフスタイルについて発信しています。本書で示される令和シニアは、まさにこの三つを自分自身で再設計している世代です。

定年後も働く場所を選び、会社以外の人とのつながりをつくり、仕事、学び、趣味、家族との時間配分を組み替えていく。そこには、「定年後は余生」という従来型の人生モデルとは異なる、能動的で多様なライフスタイルがあります。

また、令和シニアの消費行動が、価格やブランドの知名度だけではなく、体験や共感を重視する方向へ変化していることも重要です。

人生経験を重ねた人ほど、自分にとって本当に価値のあるものを見極め、商品やサービスの背景にある物語や姿勢を評価するようになります。

企業側も、単に「シニア向け」と表示するのではなく、その人がどんな人生を送りたいのかに寄り添う提案が求められるでしょう。

長寿社会において、すべての世代がこれから経験する働き方、健康、コミュニティ、消費の変化を先取りすることです。

企業の経営者、マーケティング担当者、新規事業開発に携わる方はもちろん、60代からの働き方やライフスタイルを考える方世代を超えた新しい社会のあり方に関心のある方に、ぜひ読んでほしい一冊です。

YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、読書術、人生後半戦の生き方、定年後キャリア、資産形成、健康、AI活用などについて発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。

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では、今日もハッピーな1日を!【4173日目】