『あぶないオルカン』
「オルカンだけを買っていれば、本当に大丈夫なのか。」― 新NISAのスタートをきっかけに、低コストで世界中の株式へ分散投資できる「オルカン」が大きな人気を集めています。しかし、全世界株式という名称から受ける安心感とは裏腹に、実際には米国株への偏りが大きく、好成績がこの先も続くとは限りません。本書は、日本経済新聞の元記者が、オルカン一択の危うさと、長期投資で本当に大切な視点をわかりやすく解説した一冊です。
本日紹介するのは、東京大学教養学部卒業後、日本経済新聞社に入社。産業部、神戸支社、証券部、米国ワシントン勤務、証券部編集委員、日本経済研究センター主任研究員、日本経済新聞社編集委員などを歴任し、2022年2月に証券ジャーナリストとして独立。現在は週刊メディア「マーケットエッセンシャル」を創刊し、主筆を務める前田昌孝(まえだ・まさたか)さんが書いた、こちらの書籍です。
前田昌孝『あぶないオルカン』(宝島新書)
本書は、低コストで世界中の株式へ投資できるオルカンの利点を認めながらも、「これ一本で安心」「何も考えずに積み立てればよい」という過度な期待に警鐘を鳴らしています。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.知っていないとあぶない
2.好成績が続くと思うとあぶない
3.バフェットさんに学ばないとあぶない
4.資産分散をしていないとあぶない
5.売り手の事情を知らないとあぶない
6.心の準備がないとあぶない
本書の前半では、オルカンの基本的な仕組みと、人気の背景にある注意点が紹介されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ オルカンは全世界株式型の投資信託ですが、実際には米国株の比率が大きく、完全に均等な世界分散ではない
◆ 低い信託報酬や積み立てやすさは大きな長所である一方、商品名の印象だけで安全だと判断してはいけない
◆ 過去の高い運用成績には、米国株の上昇や円安の影響が大きく含まれている
◆ 新NISAで人気が集中していることと、将来も高い収益が得られることは別の問題
◆ 投資対象や値動きの特徴を理解せず、評判だけで購入することの危険性を知る必要
この本の中盤では、過去の好成績を将来へ単純に当てはめることの危うさと、投資の基本姿勢が解説されています。主なポイントは次の通り。
◆ 米国株が長く好調だったからといって、今後も同じような高成長が続く保証はない
◆ 株価が割高な局面では、長期間にわたって期待した収益を得られない可能性もある
◆ ウォーレン・バフェットの投資哲学から、わからないものには投資せず、価格と価値を見極める姿勢を学ぶ
◆ 人気商品に一括して資金を集中させるのではなく、株式以外の資産も含めて分散を
◆ 投資では商品の選択だけでなく、購入する時期、保有期間、資金の使い道まで含めた設計が重要になる
本書の後半では、金融商品の売り手側の事情と、相場下落に備える心構えについて紹介されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 金融機関や運用会社、メディアには、それぞれ商品を販売し、資金を集めたい事情がある
◆ 「人気ランキング」「おすすめ商品」といった情報を、そのまま投資判断に使うことには注意が必要である
◆ 株式だけでなく、現金、債券、預金などを組み合わせ、自分に合った資産配分を考える
◆ 暴落時に慌てて売却しないためには、あらかじめどの程度の下落まで耐えられるかを確認しておく
◆ 投資を始める前に、損失が出る可能性を受け入れ、長期で保有するための「心の準備」を整える
本書の最大のメッセージは、「オルカンが悪い」のではなく、「オルカンだけで何も考えなくてよい、という思い込みが危ない」ということです。
オルカンは、低コストで幅広い国や企業へ投資できる、優れたインデックス投信の一つです。とくに投資初心者が、個別株を選ばずに長期・積立・分散投資を始める商品としては、有力な選択肢でしょう。
しかし、全世界株式という名称から、「世界全体へ均等に分散されている」「大きく損をすることはない」と考えてしまうと危険です。
実際の構成は、世界の株式市場の時価総額に応じて決まるため、米国株の比率が高くなっています。そのため、米国株が大きく下落すれば、オルカンも相応の影響を受けます。
過去のリターンを見て、「今後も同じように増える」と期待することはできません。
投資で大切なのは、どの商品が最も儲かるかを当てることではなく、自分がどの程度のリスクを取れるかを理解し、長く続けられる資産配分をつくることです。
たとえば、老後資金のすべてを株式投信へ集中させれば、取り崩しを始める直前に相場が暴落した場合、生活設計に大きな影響が出ます。一方で、預金だけではインフレによって実質的な価値が減る可能性があります。
だからこそ、株式、債券、預金などを組み合わせ、年齢、収入、資産額、投資期間に応じてバランスを取る必要があります。
私自身も新NISAや資産形成について発信していますが、「オルカンとS&P500」のインデックス投信を推奨していて、預貯金や年金など資産の大半を元本保証の円資産で保有する日本人高齢者は、それだけで資産分散になっていると言えます。
本当に重要なのは、何のために投資するのか、いつ使うお金なのか、という投資の目的と設計で、とくに「お金の使い方」がポイントです。
50代、60代の資産形成では、若い世代と比べて運用できる期間が短く、資産の取り崩しも視野に入れる必要がありますが、人生100年時代では運用期間も長いので、過度に保守的な運用にする必要もありません。
本書は、オルカンを買うべきか、買ってはいけないかという単純な結論を求める本ではありません。投資商品の中身を知り、売り手の情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考える投資家になることを促す一冊です。
新NISAで投資を始めた方、オルカンを積み立てている方、これから老後資金を運用したい方、そしてインデックス投資のリスクを冷静に理解したい方に、ぜひ読んでほしい一冊です。
YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、読書術、人生後半戦の生き方、定年後キャリア、資産形成、健康、AI活用などについて発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCIwJA0CZFgYK1BXrJ7fuKMQ
では、今日もハッピーな1日を!【4172日目】








