「不動産価格の低下から生じた経済不振によってピークアウトを迎えた中国経済には、これまでにない、大きな不確実性が生じている。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、神戸大学経済学部卒業後、中国人民大学に留学(財政金融学院)、神戸大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学)、神戸大学大学院経済学研究科教授の梶谷懐さんと、千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学、二度の中国留学経験を持つフリージャーナリスト、翻訳家の高口康太さんが書いた、こちらの書籍です。
梶谷懐・高口康太『ピークアウトする中国「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書)
この本は、中国経済のピークアウトという時事的な関心に応えたものでありながら、より射程の長い議論として展開している書です。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.中国の不動産市場に何が起きているのか?
2.ポストコロナの不動産危機
3.新型都市化と不動産リスク
4.中国不動産市場と「合理的バブル」
5.中国社会を覆う悲観論
6.地方政府はなぜ財源不足に苦しむのか
7.「殺到する中華EV」は中国経済を救うのか
8.不動産バブルと過剰生産のゆくえ
この本の冒頭で著者は、「本書の特徴は、不動産市場の低迷による需要の落ち込みと、EVをはじめとする新興産業の快進撃と生産能力過剰という二つの異なる問題を、中国経済が抱えている課題のいわばコインの裏と表としてとらえる点にある。」と述べています。
本書の前半では、「中国の不動産市場に何が起きているのか?」および「ポストコロナの不動産危機」について以下のポイントを紹介しています。
◆ 未完成で長期放置のタワマンが当局指示で工事再開
◆ 陸の孤島に建つ巨大幽霊タワマン
◆ 控えめだった財政出動と企業債務の急拡大
◆ 民生部門の保証が十分に行われず、格差が拡大
この本の中盤では、「新型都市化と不動産リスク」「中国不動産市場と合理的バブル」「中国社会を覆う悲観論」および「地方政府はなぜ財源不足に苦しむのか」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 2019年以降、旧市街地再開発が乱開発の懸念から急ブレーキ
◆ 長期にわたって資産価格の上昇がみられる「合理的バブル」が行き詰り
◆ 成長が続くという楽観性が後退し、企業も個人も保守的な姿勢に
◆ 不動産危機が地方政府の財源不足につながり、均衡財政になっている
本書の後半では、「殺到する中華EVは中国経済を救うのか」および「不動産バブルと過剰生産のゆくえ」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ EVなど高付加価値の新産業でも中国の大量輸出が各国の反発を招いている
◆ 補助金によって市場を拡大、参入が増えて競争が激化して価格が下がる産業政策
◆ 不動産バブル崩壊で、内向きの「質の高い発展」に転換した「一帯一路」
◆ 過剰生産問題を、消費需要の拡大によって解消できるかが今後の課題
この本の締めくくりとして著者は、中国経済の「過剰」がいよいよ限界を迎えようとしている、と述べています。
あなたも本書を読んで、ピークアウトした中国について、多面的な切り口で考察を試みてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3700日目】