書評ブログ

『「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する知財ミックス』

「世界で稼いでいる企業は、どの企業もほぼもれなく、自社や他社の知財を組み合わせて価値を最大化し、競争力を確保・保護(権利化)・強化するための戦略を持っています。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了後、三菱総合研究所、デロイトトーマツコンサルティングを経て、2020年に株式会社テックコンンシリエを設立し、現在は同社代表取締役、知財ビジネスプロデューサー鈴木健二郎さんが書いた、こちらの書籍です。

 

鈴木健二郎『「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する知財ミックス』(ポプラ社)

 

本書は、企業や個人により生み出された発明やノウハウ、ブランドから成る「知財」が「目に見えない」資産でありながらも、収益を生み出すことができる資産であるという分かりづらさを解きほぐすこと、そして、知財をミックスするということの考え方とその実践行動を、読者の皆さんの心の中に刻み込んでいただきたいという強い思いをもって記した書です。

 

 

本書は以下の9部構成から成っています。

 

1.世界で戦える事業を日本発で創るために

2.世界的企業に共通する「知財ミックス」と「ビジョン経営」

3.なぜ日本は「30年」も失ってしまったのか

4.ミックスする「知財」を正しく知る

5.知財ミックスを立案する

 

6.ミックスした知財で価値を提供する

7.知財ミックスを実践するための行動

8.知財ミックスを加速するスタートアップとの協業

9.このままでは、日本は「次の10年」も失ってしまう!

 

この本の冒頭で著者は、「本書では、近年多様化している知財を複合化(ミックス)し、柔軟に活用して事業を展開することを『知財ミックス』と呼びたい」と述べています。

 

 

本書の前半では、「世界で戦える事業を日本発で創るために」「世界的企業に共通する知財ミックスとビジョン経営」および「なぜ日本は30年も失ってしまったのか」ついて、以下のポイントを説明しています。

 

◆ 知財を活用して勝てるビジネスの戦略を立てる

◆ 多様な知財を組み合わせて最適な知財ポートフォリオを行う「知財ミックス」

◆「知財ミックス」は「ビジョン経営」とともに実践する

◆ アップルが「知財ミックス」と「ビジョン経営」の再考のお手本

 

◆ 日本企業は技術やアイデアは革新的だが、価値へ変換する仕組みづくりがない

◆ 社会や顧客の課題・ニーズの変化に対応できない日本

◆ イノベーションは、①社会・顧客の課題解決につながる革新的な技術・アイデアで新たな価値を創造し、②社会・顧客への普及・浸透を通じて、③ビジネス上の対価(キャッシュ)を獲得すること

◆ 知財ミックスを活用して洗練された「ファンづくり」の仕組みを構築するアマゾン

◆ 知財ミックスでマネジメントする時代に

 

 

この本の中盤では、「ミックスする知財を正しく知る」「知財ミックスを立案する」および「ミックスした知財で価値を提供する」ついて解説しています。主なポイントは次の通りです。

 

◆ 知的財産とは、技術・ノウハウ、デザイン、サービス名称、音楽・映像、キャラクター・アート、プログラムなど各企業が持っている「無形資産」

◆ ブランド価値を高めるための知財のトータルマネジメント

◆「未来の先読み」と未来から逆算する発想の「バックキャスティング」

◆ 知財ミックスに求められるスピード、アイデア特許の重要性

 

◆ お客様に届けたい「世界観」を明確に

◆ コアなファンをつくる思考を持つ「真のブランド戦略」

◆ 会社のビジョンや世界観を積極的にファンに伝える

◆ 特許は「収益モデル」を守るために取る

◆ 知財は個人でビジネスを広げるのに扱いやすい

 

◆ 知財を価値提供に変換する知財ミックス

◆ 知財ミックスに必要な5つの実践行動

◆ アップルの製品・サービスに「五感のすべてをゆだね、日常を快適に過ごすことができる」という唯一無二の世界観でファンを魅了

◆ 美しく、直感的に使えるデザイン

◆「Apple System」という知財を核としたプラットフォーム

 

 

本書の後半では、「知財ミックスを実践するための行動および「知財ミックスを加速するスタートアップとの協業」について考察しています。主なポイントは以下の通り。

 

◆ 実践行動①:「社会・顧客の課題・ニーズ」を設定する

◆ 実践行動②:「収益」を生み出す仕組みをデザインする

◆ 実践行動③:内外の技術やアイデアを資産として見える化する

◆ 実践行動④:パートナーとの積極的な共想により、知財のパワーを増強する

◆ 実践行動⑤:リスクを適切に評価し、対応策を周到に打つ

 

◆ 目指す姿の戦略構築には、①アウトカム(社会価値・経済価値)、②アウトプット(製品・サービスの提供)、③事業活動(競争力ある事業創出)、④インプット(強みとなる知財・無形資産)の順にバックキャストで分析

◆ アイデア創出において、外部とのコラボレーション

◆ スタートアップとのライセンスそ進め方は、①戦略策定(オープンディスカッション)、②協業交渉、③契約締結(履行期間中)、④事業シナジーの発揮

◆「出島」の発想で新規事業を構築

◆ 価値創造メカニズムは、①ゴールとなる未来課題の設定、②仮説検証型情報分析と戦略立案、③未来価値創造シナリオの提案プレゼンテーション

 

 

本書で提唱している「あるべき姿(ビジョン)からバックキャスティングで発想する」戦略的思考は、私が拙著『定年ひとり起業生き方編』(自由国民社)などで提言した、人生設計を考える際に根幹としている「人生のミッション」と同じコンセプトであり、強く共感しました。

 

 

また、この本では、世界の株式時価総額でトップを占めるGAFAMの実践する「知財ミックス」や「ビジョン経営」が具体的に分かりやすく紹介・解説されていて、参考になります。とくにアップルやアマゾンの世界観と戦略は読みごたえがあり、ぜひ一読をお薦めします。

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「このままでは、日本は次の10年も失ってしまう!と警鐘を鳴らし、「日本人に欠けているのは、知財ではなく、それを活かすための実践行動です。」と述べています。

 

そして、「日本はむしろ知財リッチな国です。」「本書が提案する知財ミックスは、(中略)日本の企業や個人が、自身の力で明日からでも実行しうる新規事業創出の最良の方法である」と続けています。

 

 

あなたも本書を読んで、見えない資産が利益を生む「知財ミックス」の考え方を学び、企業や個人で実践行動を起こして、ビジョンを実現していきませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3227日目】