「ビジネスパーソンにとって西洋近現代美術の展開史を知ることは、まさしく、このグローバル社会に根を下ろす重要な契機ともなり得る」と述べて、産業革命以後の西洋近現代美術のダイナミックな生成と変化をたどって解説している本があります。
本日紹介するのは、1974年毎日新聞に入社、社会部記者を経て、1980年から2008年まで毎日新聞学芸部にて美術担当記者として活動し、退職後は美術ジャーナリストとして活躍する三田晴夫さんが書いた、こちらの新刊書籍です。
三田晴夫『教養としての近現代美術史』(自由国民社)
この本は、産業革命に伴う市民社会の成立を出発点に、西洋近代美術が成立し、20世紀、さらに21世紀の現在へと、どのような変遷と刷新の軌跡を繰り広げてきたのか、その場面々々で、どのような美術家たちが主役を演じ、いかなる表現刷新のドラマを繰り広げてきたのかを、ビジネスパーソンの「教養」として整理し、紹介・解説している書です。
本書は以下の3部構成から成っています。
1.19世紀絵画
2.20世紀絵画
3.ポストモダン絵画・彫刻
この本の冒頭で著者は、旧来の血統に根拠づけられた王侯貴族階級に代わって、資本家や労働者に代表される新たな市民階級の台頭や勢力的な伸長という、社会的な主役の交代劇により、現実を見つめる画家たちの視線や内的な意識にも相応の変容を促さずにはいなかった、と指摘しています。
そしてビジネスパーソンにとって、こうした西洋近現代美術の展開史を知ることは、まさしく、このグローバル社会に根を下ろす重要な契機ともなり得るのでは、と著者は言います。
続いて、「19世紀美術の主な出来事」と「20世紀美術の主な出来事」が見開き2ページにて、分かりやすく整理されていて、西洋近現代美術史を俯瞰するのにとても有益です。
まず19世紀の絵画は、次の5つのジャンルとして整理されています。
◆ ロマン主義と新古典主義
◆ 写実主義とバルビゾン派
◆ 印象派と新印象派
◆ 象徴主義
◆ 世紀末絵画
私が作品を観たことのある画家で言えば、ターナー、クールベ、マネ、ドガ、ミレー、モネ、セザンヌ、ルノワール、ゴーギャン、ゴッホなどです。
それぞれの特徴や流れについては、詳細な解説が記されていますので、ぜひこの本を手に取って確認してください。
次に、20世紀の絵画について、以下の15のジャンルについて、紹介・解説されています。
◆ 表現主義とフォーヴィズム
◆ フランス・キュビズム
◆ イタリア未来派とロシア・アヴァンギャルド
◆ 沸騰した反芸術~ダダイズムとデュシャン
◆ 抽象画の台頭~デ・ステイルとバウハウス
◆ 具象画に変容
◆ シュルレアリスム
◆ 第二次世界大戦と美術
◆ 熱い抽象~アンフォルメル
◆ 抽象表現主義
◆ アメリカ抽象画の展開
◆ ポップアート(アメリカ・ヨーロッパ)
◆ ミニマル・アート
◆ コンセプチュアル・アート
◆ 復活した絵画~新表現主義/ニュー・ペインティングナド
ここでは、舞台がヨーロッパからアメリカへ移っていく流れを解説しています。
画家としては、有名なマティス、ピカソなどが出てきます。ここは本書の中心となる部分で、詳細な流れや画家・作品が具体的に紹介されています。
さらに1989年ベルリンの壁崩壊以後は、東西冷戦の終結を背景に、ポストモダンの美術が現れます。
この本は、仕事に使える「教養」として、美術担当記者を長く勤め、フリーの美術ジャーナリストとして活動する三田晴夫さんが、ビジネスパーソンのために整理・解説した入門書です。
巻末には、主要参考文献や本書に掲載された作品所蔵先も表になっていますので、興味を抱いたジャンルについてはぜひ、文献や実物の作品を観ることをお薦めします。
この本は、著者の三田さんが、美術担当記者およびその後の美術ジャーナリストとして活動してきた集大成と言えるもので、西洋美術史がわかれば「世界」がわかる、ビジネスに使える言葉も満載の良書です。
あなたも本書を読んで、教養としての近現代美術史を学んで、異文化コミュニケーションに活かしてみませんか。
2020年4月10日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』、今日は【第60回】教養としての近現代美術史、にて紹介しています。
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では、今日もハッピーな1日を!