書評ブログ

『人口は未来を語る:「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』

「今日のわたしたちを作り上げてきたのは、歴史上の人口動態の大きなうねりである。そのうねりは今このときもわたしたちを巻き込み、過去を形成したのと同じように現在と未来を形成しようとしている。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、オックスフォード大学哲学・政治・経済の学士号、国際関係論の修士号を取得後、ロンドン大学博士号を取得、イギリス、ドイツの市民権を持ち、作家・放送作家として世界の人口動向について執筆・講演を行うほかフィナンシャル・タイムズ紙など多くの新聞や雑誌に寄稿している人口学者ポール・モーランドさんが書いた、こちらの書籍です。

 

ポール・モーランド『人口は未来を語る:「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』(NHK出版)

 

この本は、人口に関する事象が「今日の人々」のありようを解き明かすだけではなく、「明日の人々」のありようも照らし出すことができることを明らかにしている書です。

 

本書は以下の10部構成から成っています。

1.乳児死亡率の低下で変わる国々

2.人口爆発後の「人口ボーナス」はあるか

3.急速な都市化がもたらしたもの

4.出生率が低い社会の共通点

5.高齢化社会と暴力との意外な関係

 

6.最先端の高齢化社会は世界の未来

7.世界は人口減少を食い止められるのか

8.民族構成が映し出す未来

9.教育の向上は国家の発展を促す

10.人類は食糧危機を乗り越えられるのか

 

この本の冒頭で著者は、10のテーマはいずれも孤立した問題ではなく、互いに因果の連鎖でつながっている、と述べています。

さらに「乳幼児死亡率の低下は人口増加をもたらし、都市化へと波及する。都市で暮らす人々は小家族を選択するようになり、出生率が低下して社会が高齢化し、やがて人口が減少し、移民流入と民族構成の変化へとつながっていく。一方、因果の連鎖全体にはたらきかけて変化を促すのが、教育機会の拡大と食料の入手可能性の向上である。」と続けています。

 

本書の前半では、「乳児死亡率の低下で変わる国々」「人口爆発後の人口ボーナスはあるか」および「急速な都市化がもたらしたもの」ついて以下のポイントを説明しています。

◆ 乳幼児死亡率の低下で、人口増加を経て出生率低下を招く

◆ 死亡率は毎年ハードルを越えていくハードル走のようなもの

◆ 国が豊かで教育水準が高い国ほど乳児死亡率は低いが、最近50年は途上国で急激な改善

◆ 国家間の経済格差は縮小する一方、各国内の経済格差は拡大

 

◆ アフリカの人口爆発が起こり、アフリカ内での移動が拡大

◆ 世界人口はアフリカの出生率しだい

◆ 中国の急激な都市化が、格差を拡大、都市の盛衰が人口動態を決める

◆ 都市住民の方が燃料使用効率が高くなり、環境にやさしい

 

この本の中盤では、「出生率が低い社会の共通点」「高齢化社会と暴力との意外な関係」「最先端の高齢化社会は世界の未来」および「世界は人口減少を食い止められるのか」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

◆ シンガポールで起きた急激な出生率低下は、女子教育の普及と小家族化

◆ 単調で骨の折れる家事労働と子育ては、自分が受けた教育や期待とは相容れない

◆ 世界中で起きている「赤ちゃん不足」

◆ 出生率の低い社会に共通するのは、婚外出生が少ないこと

 

◆ 宗教色が強く保守的な地域ほど出生率が高い

◆ 母親としても働き手としても待たされずにいる女性が多い日本の幸福度は低い

◆ 高齢化で紛争が減る

◆ 民主主義を促す中高年者会

 

◆ 平均寿命の延長と百寿者の増加で最先端の超高齢社会・日本は世界の未来

◆ 公的年金制度は基本的に「ポンジ・スキーム」で加入者が減少すれば破綻する

◆ 老後にまともな暮らしを送るには、とにかく働き続けるしか解決策はない

◆「豊かになる前に老いる国々」がこれから出てくる

 

◆ 人口減少が進む先進国

◆ 人口を支える第三勢力=純移民数

◆ 市街地も過疎化する日本

◆ 日本の郊外は「ミニ・デトロイト化」して荒廃した空き家だらけに

 

本書の後半では、「民族構成が映し出す未来」「教育の向上は国家の発展を促す」および「人類は食糧危機を乗り越えたのか」ついて説明しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 移民・人種問題と闘ってきたアメリカ

◆ 移民の流入で変貌するヨーロッパ

◆ 移民と民族構成の変化は必然ではなく、政府の選択=世論の繁栄

◆ 教育が生み出す発展と民主主義

 

◆ 世界を養うイノベーション

◆ 教育が農業生産性を高める

◆ 世界人口は増加を続けるが、増加率は下がり、都市化・高齢化が進み、教育水準が上がり、栄養状態もよくなる

◆「経済力」「民族性」「エゴイズム」のトリレンマ

 

この本の締めくくりとして著者は、「日本のように経済成長を犠牲にして、民族の連続性とエゴイズム(それこそが子どもを持とうとする気持ちを削いでいるにもかかわらず)を優先させている国はほかにもある。」と述べています。

 

あなたも本書を読んで、世界の人口動態の歴史と未来を学び、政治・経済・社会に及ぼす影響をしっかり分析していきませんか。

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3519日目】