「日本は、大きな視野で次の消費、次の時代の日本人がどんな豊かさを求めて、どんな生活をするかを考える企業が少ない。DXだSDBsだパーパスだという課題に追われてばかりで、自分から時代を創り出すために物を考えるという態度が皆無である。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1958年生まれ、一橋大学社会学部卒、パルコに入社してマーケティング情報誌『アクロス』編集長になり、三菱総合研究所を経て、1999年にカルチャースタディーズ研究所を設立、消費社会研究家として消費・都市・社会を予測、大手企業や都市・住宅政策などへの助言を行っている三浦展さんが書いた、こちらの書籍です。
三浦展『永続孤独社会 分断か、つながりか?』(朝日新書)
この本は、「脱・私有」を掲げ、私有よりもレンタルやシェアたコミュニティを重視する時代が来ると予測して著者が提唱した「第四の消費」から10年の時を経て、新型コロナの流行により「第五の消費社会」を生み出す契機になるかどうかという問題意識のもと、「つながりが切れる社会」「つながりを恐れる社会」という側面を考察した書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.概説:消費社会の四段階
2.「魔法の時代」と「再・生活化」、あるいは「ケアのシェア」へ
3.永続孤独社会
4.コロナ後の第四の消費・社会を担うのは女性と若者である
5.第四の消費・事例集
この本の冒頭で著者は、「本書一冊で、『第四の消費社会』の10年間が理解できるようにしたかった。」と述べています。
本書の前半では、「概説:消費社会の四段階」について、次のポイントを解説しています。
◆ 第一の消費社会(1912~1937年):大都市を中心に中流階級が消費と娯楽を楽しむ
◆ 第二の消費社会(1945~1974年):三種の神器、3C、マイカー時代
◆ 第三の消費社会(1975~1997年):軽薄短小、ブランド志向・高級化・カタログ文化
◆ 第四の消費社会(1998年~):脱私有、共費、シェア、レンタル
この本の中盤では、「魔法の時代と再・生活化、あるいはケアのシェアへ」および「永続孤独社会」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 自己充足としての消費
◆ ロングライフであることの価値
◆ 高度成長期以前の日本人の暮らしを見直す「再・生活化」
◆ メタバースなどの「魔法の時代」
◆ 総シングル社会におけるライフスタイルケア市場
◆ ケアが成長ビジネスになる
◆ ケアをシェアする
◆ 第四の消費の頭打ち、シンプル志向、日本志向の弱まり
◆ 繋がりが立たれた孤独社会
◆ ドリームハラスメントと若者の孤独
◆ 孤独度には職業や年収の階層格差との関連がある
◆ 現代の若者は将来、孤独になることを前提に行動
◆「設定、関係、性格、価値観」がかみ合わないための孤独
◆「低い承認」の時代
◆ リアルからの撤退とメタバース
◆ メタバースは孤独時代の「第五の消費」か
本書の後半では、「コロナ後の第四の消費・社会を担うのは女性と若者である」および「第四の消費・事例集」をテーマに著者の見解を紹介・説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ コロナ後の人々の価値観変化
◆ 人間関係の大切さ、毎日通勤を嫌だと思う気持ち
◆ 大宮が住みたい街3位に(個人店的なカフェ、多様な職住近接など)
◆ 郊外志向の高まり
◆「若者特区」「女性特区」の必要性
◆ 第四の消費・事例10都市
この本の締めくくりとして著者は、「コロナ禍のために孤独を感じる人が増え、女性や未成年の自殺も増えた。」と述べています。
コロナ前から日本では、シングルマザー、児童虐待、貧困、格差、拡大自殺、LGBT、独居老人など、「生と死と愛と孤独」および「自由」あるいは「自己責任」の問題はこの20年ほどの間に拡大し続けてきました。
あなたも本書を読んで、つながるのが怖いと感じる「永続孤独社会」についてしっかりと考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2831日目】