福沢諭吉が『学問のすゝめ』において、実利性を重視した「実学」を強調したのに対して、「娯楽性」に重点を置いた「楽問」を提唱する書があります。
本日紹介するのは、理学部博士で「科学史」が専門の小山慶太さんが書いた、こちらの書です。
小山慶太『知的熟年ライフの作り方』(講談社現代新書)
この本は、つい最近の2015年7月17日付ブログ記事にて本書を紹介していますので、こちらのリンクからお読みください。
本書において著者の小山さんは、「学問こそ、熟年世代の知的道楽だ」と説いています。謎解きや知りたいことを調べる作業というものは心がワクワクするものです。
そして、そういうテーマや領域は、それ相応の人生経験を積んだ世代の人々には、必ずひとつやふたつはあるはずだ、と著者は言います。
あるいは、若い頃から関心を持ち続け、心の中で温めていた研究課題を持っている方も少なくないと思います。
現在は、シロウトであっても何か研究に取り組みたいと考えた場合、それを支援してくれる社会の知的基盤が、かなり整備されている、と小山さんは述べています。
時間と意欲があれば、こうした環境を活用して、相当程度の研究成果を上げることは可能だ、というのが本書の結論です。
本書は、以下の6部構成から成っています。
1.「学問のすすめ」から「楽問のすすめ」へ
2.学問の原点は道楽精神
3.よりよいテーマ選びが面白い研究を生む
4.読書の結晶作用、執筆の発酵作用
5.ライフワークをもつ
6.熟年の生きがいは学問から
本書では、小山さん自身の「楽問」の対象でもある夏目漱石の話が頻繁に出てきます。夏目漱石が学問の道楽的側面を重視していたことが序章はじめ数箇所で触れられています。
漱石の作品には「高等遊民」と称される、明治期特有の知的有産階級がよく登場する、ということです。つまり、高学歴(帝国大学卒業の身分)を得ながら職に就こうとはせず、食うに困らぬ境遇のもと、気ままで自由な生活を送るディレッタントたちです。
例えば、『それから』の主人公、長井代助もそのひとり。ほかにも、『虞美人草』、『彼岸過迄』、『こころ』など、漱石の代表作には欠かさず、この「高等遊民」が頻繁に登場して物語の展開にも重要な役割を果たしています。
漱石自身も、彼ら高等遊民たちの「束縛のない精神生活」にあこがれていたのだろう、というのが小山さんの見解です。
そして今日では、社会の知的基盤が整備され、高学歴化が進んでいることから、熟年世代には「職業から解放された内容ある時間」が与えられているのだから、誰でも「現代の高等遊民」になれる、ということです。
普通のサラリーマンであった人でも、健康に恵まれ、知的好奇心を抱きつづけ、何かを創造し、社会に発信しようという意欲さえもてば、遠慮することなく、誰にでも可能だ、というのが著者の主張です。
以上の背景から本書では、「生涯学習」から一歩進んで、「生涯研究」を提唱しています。「お勉強」やハウツーを学ぶだけでは長続きしません。
さらに深めてテーマを絞り、「研究」として続けていくことを勧めています。持続、継続の秘訣は、一定の「修業期間」を経たら、いわゆる「お勉強」の域を卒業し、オリジナルな研究に着手することです。
創造性を通しての自己実現をめざす、というのが熟年世代の「生涯研究」のコンセプトです。
本書の最後で著者は、生涯研究に浸り切り、知的道楽三昧の人生を享受するための「要諦」を述べています。
熟年期を迎え、仕事や責務、世の中のさまざまな “ しがらみ ” から少しでも解放されるようになったら、これ幸いと考え、「自由になる時間」という、金には替え難い価値ある財産がそのぶん潤沢になったと認識すべき、ということです。
つまり、要は「心構え」の問題です。積極的な第二の人生を送るという気持ちです。その上で「生涯研究」を「楽問」として楽しむキーポイントが以下の3点です。
1.自分に適したオリジナルな研究テーマを見つけること
2.テーマが見つかったら同好の士を募りサークルを作ること(または会に入ること)
3.自らが情報・知識の発信者になり、研究の成果を発表できる場を作ること
以上の、①テーマを見つける、②仲間をつくる、③発表の場を工夫する、の三つが、知的熟年ライフの柱になります。
あなたも、本書が提案するコンセプトに学び、充実した熟年ライフにチャレンジしてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!