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ルキウス・セネカ『どう生きるか、どう死ぬか「セネカの智慧」』(三笠書房)

ルキウス・セネカは、今からほぼ2000年前の紀元前4年頃に、古代ローマの騎士階級一族の次男として生まれた。青年期に呼吸器の持病が悪化して自殺さえ考えるほどの病気の苦しさを、哲学(ストア派)に没頭することで耐えた。

 

セネカは30歳代になって高官の道を歩み出し、後に暴君として世に知られる皇帝となったネロの家庭教師を務め、彼の師となった。ネロが16歳で皇帝に即位すると、その後ろ盾となって初期の善政を実現、後世、「ネロの五年」と呼ばれた。

 

本書は、セネカの書『人生の短さについて』および『心の平静について』の超訳が掲載されているが、冒頭に、明治大学教授で作家の齊藤孝氏による巻頭エッセイ『「人生の質」を高める智慧の宝庫ー「セネカ」入門』が寄せられている。

 

齊藤孝氏は、セネカの主張は、「人生は短いのだから、忙しさを理由に、人生の時間を無駄にしてはならない」と要約している。また、セネカ流の 「幸福な生き方」 として、「私たちが生きているのは ”今” しかない。今を生きろ」 という主張が、最も強く共感する言葉だと紹介している。

 

では、セネカの『人生の短さについて』について、私が強く印象に残った言葉を紹介していこう。

 

1.人生は短いのか、私はそうは思わない、時間は常にたっぷりある、時間の正しい使い方を知れば
2.自分の人生を意識した時間だけが人生の長さとして加算される、それ以外の時間は消え失せるだけである
3.自分の財産を分けるのはしぶるのに、なぜ 「自分の時間」 をやすやすと差し出してしまうのか
4.「幸運な人生ですね」 と称賛されたところで、自分が満足しなければ価値はない
5.どう生きるか、どう死ぬかについては誰も教えてくれない、充実した人生を送ろうとするなら、それを探求する時間を持たなければならない

 

6.「今日が人生最期の日」 と思って、毎日を生きよ
7.過去とは、決して奪われることのない財産である
8.雑事に心を奪われている時間を人生の時間とは呼ばない
9.「自分」 を人生の主人とし、先人の英知に学べば、人生は限りなく豊かで長いものになる
10.「魂が成長する喜び」 を知らずに一生を終えようとしていないか

 

次に、『心の平成について』の中の印象に残った言葉は次の通りだ。

 

1.檻に入れられたライオンは何もできない、しかし人間はどこにいようが知性で、言葉で、人に奉仕することができる
2.自分の能力を把握すること、重すぎる荷は運搬人を押しつぶしてしまう
3.友は厳選しなさい、堕落したところのない人、そして悔やんでばかりいない人を
4.体も財産も地位も家族も、すべては神様からの 「借りもの」 である
5.避けられないことを思い悩まず、自分に課したことに専念すべし

 

セネカは『媚びない人生』の著者であるジョン・キム氏の人生論のバックボーンになる師と呼ぶ哲学者だ。とくに、『人生の短さについて』は、私たちに生き方の指針を示してくれる。

 

人生は有限であり、「自分が主役」の人生を送るためには、ありのままの自分で、今を生きることが大切だ。人生の「指揮権」を決して手放してはならない。

 

自分らしい生き方、自分が主役の人生を送りたい、すべての人々に本書を心から推薦したい。