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本所次郎『小説 日銀管理』(光文社文庫)

2014年3月22日・23日の夜9時から、2夜連続でTBS大型ドラマ『LEADERS』が放送され、多くの視聴者から感動の声が寄せられた。

 

戦後日本経済の復興を牽引した自動車産業の礎を築いたトヨタ自動車の創業期の物語だ。主人公は俳優 佐藤浩市が演じた愛知自動車の社長 愛知佐一郎、すなわち、トヨタ自動車の創業社長 豊田喜一郎だ。

 

今や日本のトップ企業のみならず、世界の自動車産業を牽引する販売台数世界一のトヨタ自動車にもこのような苦難の創業の歴史があったことは驚きだ。

 

終戦後の日本経済のインフレと、それを防ぐための日銀による強力な金融引締め政策が多くの日本企業を経営危機に追い込んだ。黎明期のトヨタ自動車もその例外ではなく、倒産の危機を迎える。

 

本書は、このTBS大型ドラマ『LEADERS 』の原作本となった小説だ。日本の経済史の一端として後世に残す必要がある、として著者の本所次郎氏が忠実に事実を再現した。

 

トヨタ自動車の経営危機は、日銀のリーダーシップに基づく取引銀行の協調融資による支援と日銀が行った異例の信用補完で、何とか切り抜けられた。

 

過剰生産と大量の滞留在庫を、販売会社の設立と1600人規模の人員整理による合理化を柱とする再建案で乗り切り、1949年に勃発した朝鮮戦争による特需でトヨタ自動車は復活した。

 

日銀やメインバンクの一角だった住友銀行の人間模様が小説には描かれている。またトヨタ自動車の経営陣、労働組合幹部、一般社員の当時の苦労がリアルに書かれ、感動を禁じ得ない。

 

もの作りを行うメーカーの経営者、管理職のみならず、金融機関やあらゆる業界の経営者・経営幹部にぜひ読んでもらいたい書籍だ。今夏に発売予定のTBSドラマ『LEADERS 』のDVD共々、心から推薦したい。