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宇都出雅巳『英語楽読法』(大和書房)

今回は、使える英語が身につく洋書の読み方を書いた本を紹介しよう。宇都出 雅巳氏は外資系銀行の出身で、独立後はコーチングの手法によるコミュニケーション改善などに取り組んでいるトレーナー。米国でMBAを取得、TOEIC990点など、英語力は折り紙つきだ。

 

宇都出氏は速読に関する本を数多く執筆しているが、本書はそのスキルを洋書の読解に応用したもので興味深い。どんなスキルかと言うと、「トップダウン・スパイラル法」と言う。

 

トップダウンとは、一言でいうと本の全体から部分の理解に進んでいくこと。スパイラルとは、何度も繰り返し読んでいくことである。その組み合わせなので、まずは短時間で英書の全体を読んで理解し、それを速く繰り返していく読み方だ。

 

日本語の書物でも難しい速読を、洋書で行うのは並大抵ではできないように感じる。しかし、英語の読解力を上げていく一番のコツは、易しい英文を繰り返し大量に読むことだ。これがわかっていると、トップダウン・スパイラル法という読書術は理にかなっていることが理解できるだろう。

 

本書の特徴は、具体的にビジネス洋書を取り上げて、読解法を実践的に説明している点だ。題材になっているのは、『The Willpower Instinct 』 (邦訳タイトル 『スタンフォードの自分を変える教室』神崎朋子訳/大和書房)だ。まずはタイトル、それからサブタイトルを読んでいく。本全体をパラパラめくったり、楽しんで洋書に触れ、心理的距離を近づけていくのだ。

 

見出しだけでも目に入れる、目次を確認していく、気になる箇所だけサッと読んでいく。その場ですぐわかろうとしないことがコツだそうだ。確かに全体像が掴めてくると、その本に親近感が湧いて読みたくなる。その「読みたい」という欲求や熱意が大切だ、ということだ。そして、あとがきを先取りして読んでしまう。結論がわかってから、また中味に戻るのだ。

 

1回では理解できる部分が少ないが、これを繰り返していくと、読むスピードは上がり、理解は深まっていく。1回目より2回目、2回目より3回目は読むのは速く、理解度は大きくなる。これがスパイラルということだ。この本は単なる英語読解のノウハウ本ではない。著者の別の速読本と同様、読書のやり方そのものを伝える良書である。読書好きになるためにはもってこいの一冊だ。