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三木谷浩史『たかが英語!』(講談社)

三木谷浩史氏は楽天の創業者で社長兼会長だ。日本興業銀行に勤務中にハーバード大学大学院に留学してMBAを取得した経歴だ。

 

現在は、薬品のネット販売解禁を求めて積極的な発言が目立つ。政府の競争力会議の委員を辞任する覚悟で全面解禁を政府に求めている。この行動力が起業家としての信条なのだろう。

 

その三木谷氏の実行力が発揮された象徴的な出来事が2012年7月から全面実施された楽天の英語公用語化だ。2年間という準備期間で、社内の会議、文書、食堂のメニューにいたるまで全て英語となった。

 

日本人同士の会議であっても、文書も発言も全て英語で行われる。役職者にはTOEICの基準点が定められ、期限までに達成できなければ昇格できない。この楽天の英語公用語化プロジェクトハーバード・ビジネススクールのケーススタディにも採り上げられた。

 

本書には社内公用語を英語にした三木谷氏の狙いや目的が惜しみなく披露されている。人材を世界から求めねば国際競争を勝ち抜くことはできない。東大、京大、一橋、早稲田、慶応から大量採用する楽天はかつての興銀のようだ。

 

日本の一流大学だけでは足りないし、アジアにはもっと優秀な学生が大勢いる。国際ビジネスの共通言語は、日本語でも中国語でもなく、どの国でも英語なのだ。IT企業の勝負は英語力、そういう意味で本書はITカテゴリーで紹介した。

 

英語で多様な価値観の人材とコミュニケーションを取れることが、イノベーションを起こし、企業の国際競争力につながる。三木谷氏の論理は明快だ。同じように、世界にユニクロ店舗展開を進めるファーストリテイリングでも柳井社長兼会長が、同時期に社内公用語を英語にした。

 

成長する勝ち組企業の経営者が考えていることは共通している。本書は、なぜ英語なのか、たかが英語だ、という経営者の想いがわかる良書だ。世界が注目する前人未到の楽天・英語化プロジェクト

 

すべてのビジネスマン、就活生が読むべき書だ。