書評ブログ

ビジネスに有効なクラウゼビッツの『戦争論』

変化の激しい現代に生きる私たちにとって、東西の「古典」に学ぶことは多いと言われています。先が見通せない環境だからこそ、時代を超えて読み継がれてきた「古典」にある「ものごとの原理原則」に立ち返って、自分のアタマで考えることが大切ということでしょう。

 

そうした「古典」に属する兵学書の中で、クラウゼビッツの『戦争論』は異彩を放っています。その理由は、これに並ぶ名兵学書『孫子』やフランスの兵学者ジョミニらが「いかに戦うか」という方法論を追及したのに対し、『戦争論』「戦いとは何か」という根本命題に迫り、戦争の本質を解明しようとしたことにあります。

 

そこで、本日紹介したいのは難解なクラウゼビッツの『戦争論』のポイントを解説した、こちらの入門書です。

 

是本信義『図解クラウゼビッツ「戦争論」入門』(中経の文庫)

 

クラウゼビッツは、1780年にプロシア王国に生まれ、士官学校長勤務のかたわら、フリードリッヒ大王とナポレオンの戦史研究を軸に、「戦争論」の研究と著述をライフワークとしました。

 

クラウゼビッツの『戦争論』は西洋最高の兵学書で、近代兵学の基礎、兵学原点の書と言われています。「戦いとは」という根本命題に迫り、現代のマネジメントにおけるヒントが満載と注目されています。

 

その「入門書」であるこの本は、以下の8部より構成されていますが、それがほぼ原書『戦争論』の要旨になっています。

 

1.『戦争論』を深く読むための基礎知識
2.「戦争」とはどのようなものか
3.「戦争」は理論的にどのように説明されるか
4.「戦略」とはどのようなものか
5.「戦闘」とはどのようなものか
6.何が「戦闘力」を決定づけるか
7.「守勢」と「攻勢」はどちらが有利か
8.なぜ「戦争計画」は重要なのか

 

ヨーロッパは戦争の歴史です。とくに後にドイツ帝国となったプロシア王国は戦争を繰り返してきました。クラウゼビッツは「理論」の構築に際して、観念論を橋排し、現実性を重んじました。

 

「理論は観察たるべく、教養たるべからず」という姿勢で、戦史を観察することを徹底して行いました。そうして作り上げた理論を、彼が不慮の病で亡くなった翌年、未亡人マリーに手で整理・編纂されたのが『戦争論』です。

 

『戦争論』で提唱されている著名な「原理原則」を以下に紹介します。現代ビジネスに数多く応用されています。

 

1.戦争とは、暴力行為そのものである、国家意思遂行のための政治的手段である
2.兵術は、戦略・戦術・ロジスティクスの三位一体である
3.戦略の失敗は戦術では回復できない
4.戦闘では勝敗の分岐点を見極めることが重要である
5.戦闘力=兵力の絶対量ではない
6.攻撃の際にも防御は不可欠である
7.政略と戦略の有機的結合、すなわち「戦争計画」が重要である

 

戦争や戦闘は、現代ビジネスにおける市場における企業間競争にそのまま置き換えることができます。自由貿易体制の下で、グローバル企業は日々、熾烈な国際競争を繰り広げています。

 

また、国内市場の中においても、企業による市場シェア競争は日々、大きな変化の中で熾烈を極めています。『戦争論』の教えを意思決定の判断に応用している経営者は数多くいます。

 

イスラム国の残虐な行為が国際問題になっている今日、改めてテロリスト集団の思考や戦争とはそもそも何なのかを問う『戦争論』という原点に返って考えてみる価値は高いでしょう。

 

そのためのすぐに役立つ入門書として、皆さんも『戦争論』の入り口に立ってみませんか。

 

では、今日もハッピーな1日を!