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クリエイティブシンキングのすすめ

皆さんは「クリエイティブシンキング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。クリエイティブというのは絵を描いたり、ものを作ったりなど特別な能力が必要とされるものだというのが一般的な認識かと思います。

 

アーティストやデザイナーのような、いわゆるクリエイターと言われる人たちが持つ感覚で、一般のビジネスパーソンが簡単にできるものではないと感じても無理はないでしょう。ところが「クリエイティブシンキング」とは、そうした特別なものではないと説いているのが佐藤可士和さんのこちらの本です。

 

佐藤可士和『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』(日本経済新聞出版社)

 

この本で佐藤可士和さんは「クリエイティブシンキングとは創造的な考え方で問題を解決していくこと」と定義しています。佐藤さん自体の仕事もこの「クリエイティブシンキング」が根幹になっているということです。

 

佐藤さんの仕事はアートディレクターで、デザインを始めとする表現力を駆使して、企業や商品のコミュニケーション戦略からブランディングまでを形にしていきます。

 

実際の活動はアーティスティックな自己表現とは逆で、クライアントの言葉にならない熱い思いを引き出し、社会に伝えていくための的確な方法を見つけ出して具現化していく仕事だそうです。「コミュニケーション・コンサルタント」と言った方がいいかも知れません。

 

仕事の性格上、常に相手の悩みを丁寧に拾い上げ、本質を見極め、課題を発見し、解決していくことが求められます。これがまさに「クリエイティブシンキング」ということです。

 

「現状をよりよくするために創意工夫をする」というのは実は、誰もが日常生活の中で無意識に行っていることです。例えば主婦が「家事を効率よく済ませたい」という必要性からクリエイティブな解決法を見出すことなどです。

 

「クリエイティブシンキング」というのは何か特別なことではなく、問題解決のための思考法です。この本では著者の佐藤可士和さんの今までの経験から得たいくつかのノウハウが紹介され、具体的な仕事の実例と照らし合わせた視点やテクニックが述べられています。まず次の3ステップに分類して計18の「クリエイティブシンキング」が提示されています。

 

1.クリテイティブマインドを作る
2.試してみようクリエイティブ
3.こんなところまでクリエイティブ

 

上記のそれぞれのステップ順に以下のような「クリエイティブシンキング」が提示されています。

 

1.その前提は正しいか?
2.人の話を聞く
3.悩んだら気持ちを書いてみよう
4.見立ての習慣、身につけよう
5.自分の仕事を描いてみる
6.記憶の検索エンジン

 

7.心をつかむプレゼンテーション
8.リサーチよりもリアリティ
9.お客様目線とお茶の間目線
10.何でもメディアになる
11.主体性の引き出し方
12.強いチームの作り方

 

13.ストーリーを描けるか?
14.デザインは付加価値か?
15.働き方をデザインする
16.オンとオフを無理に分けない
17.ハマれるものを見つける
18.アナログ感覚を取り戻す

 

これらのアプローチ法をヒントにすることで「クリエイティブシンキング」は進むでしょう。私自身の経験でも、佐藤可士和さんの前著であるデビュー作『佐藤可士和の超整理術』(日経ビジネス人文庫)で書かれていた思考法(これも「クリエイティブシンキング」でした)を試してみたら問題解決に近づきました。

 

今回の思考法の中でも、第1番目の「この前提は正しいか?」で、そもそも常識と考えられていることを疑うことから始める、というクリエイティブマインドを持つことが提示されています。これも私がつねに意識するようになったことの一つです。

 

また最近の仕事ではプレゼンテーションを行う機会が増えたこともあり、第7番目の「心をつかむプレゼンテーション」はとても参考になりました。そのコンセプトは「説得ではなく共感を得られるプレゼンテーション」です。佐藤さんの場合は、「自分がその問題に対して考えてきたプロセスを、順を追って率直にしゃべっているだけ」だそうです。

 

プレゼンテーションは説得の場ではなく、仕事を一緒にやっていく人たちの共感を得る場だと思っている、ということです。相手から共感を得るためには、まず自分自身がプレゼン内容にリアリティを持てるかどうかが最大のポイントになります。

 

この本では今治タオルのブランディングプロジェクトの実例が紹介されていて、何にフォーカスするかを考えるプロセスが書かれています。最終的に今治タオルが持つ素晴らしい「吸水性」に立脚した品質を社会にアピールすることになりました。

 

プレゼンテーションがどんなに大人数の場であったとしても個人個人に語りかけるつもりで話すようにしている、と佐藤さんは言います。一対一であるかのような距離感の近い話し方をすることで、その場にいる全員が思いを共有しやすくなると考えるからです。

 

その他にも、第13番目の「ストーリーを描けるか」や第15番目の「働き方をデザインする」はとても感銘を受けました。すべてを紹介することは避け、本書を読んでそれぞれの立場で考えていただきたいと思います。皆さんもぜひ、「クリエイティブシンキング」を意識した仕事をしてみませんか。

 

では、今日もハッピーな1日を!