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『今より高く売る小さな会社のブランドづくり』講義

「小さな会社のブランドづくり」を専門に手がけ、「日経トップリーダー」の超人気セミナーの講師がいます。村尾隆介さんで、今日紹介するのは、その超人気セミナーを実況中継した書であるこちらの本です。

 

村尾隆介『今より高く売る!小さな会社のブランドづくり』(日経BP社)

 

この本は、大企業のブランド戦略とは違う、小さな会社のブランド戦略について述べた書です。まず著者の村尾さんは、「小さな会社は、思っている以上に ” 分かりにくい ” 存在である」と言います。

 

大企業は社名だけで何をしている会社かということが広く知られているので、イメージを伝えるブランド戦略が機能します。しかし、小さな会社は、自分たちはそれなりに知られていると思っていても、実はお客様に全然伝わっていないということが多いものです。

 

この会社は「何が得意なのか」「事業を通じて何を成し遂げたいのか」といったことが、お客様に情報として届いていないことが多いのです。

 

したがって、実際に著者がコンサルティングの現場で、「今よりも分かりやすく伝えることができれば、それだけでも売上が伸びていく」ケースが目立つそうです。

 

つまり、小さな会社のブランド戦略はイメージではなく、まず会社としての方向性をしっかり決め、それを伝えることから始めるべきです。小さな会社にとってブランド戦略は経営戦略そのものでしょう。

 

小さな会社にとって、ブランドとは「目立つ服」を着ること、すなわち圧倒的な差異化を図ることにほかなりません。「ウチはこういう会社です」と伝えるコミュニケーション力が乏しいケースが多いのが実態です。

 

ブランド力のある企業は、まるで引力に吸い寄せられるように、ヒト、モノ、カネなどの要素が向こうからどんどん集まってきます。差異化によって「経営の矢印」が内向きになっている、ということです。

 

小さな会社の場合、ブランドづくりで目指すべきゴールは、値段が高くても選ばれる会社になっていく、ということでしょう。これまでよりも少し高価格帯(=ちょい高)のブランドづくりを目指すべきです。

 

本書の構成は大きく以下の3部から成ります。

 

 

1.今こそ「高く売る」に転じよ
2.まず「言葉」から始めよう
3.デザインは難しくない

 

 

小さな会社が高く売るブランドづくりをする上で、ぜひ意識すべきことは、「事業を絞り込み、” 発見されやすさ ” を磨く」ことです。狭い領域に特化することによって、お客様から発見されやすくなるということです。

 

小さな会社は「何でもできます」と言ったところで、「果たして何がどこまでできるのか」、「いつどんな時に頼んだらいいのか」が伝わりません。まずは事業を絞り込み、研ぎ澄ましていくべきです。

 

縛り込んだ後は、オフの知識をオンにも生かし、「同じ香り」で売ることが大切です。ヨット好きの家族が経営するヨットに縛り込んだ運送会社・ジャストヨット運送は大繁盛しています。

 

ブランドに必要なのはお客様ではなくファンです。「絞り込むことでお客様からファンに変えていく」という意識が重要です。ブランドを持っている会社とそうでない会社の違いは、ファンがいるかどうかです。

 

ファンは口コミで製品を応援してくれるし、価格をあまり気にすることなく買ってくれます。横のつながりで信頼できる人が「あの会社はいいよ」と言っているのだから間違いない、と言って新規のお客様も集まってきます

 

小さな会社は、お客様をお客様以上のファンにすることに力を注ぐべきです。ファンづくりを深めていくには、目に見えないファンの困りごとをどんどん捉えていかねばなりません。これを著者は「オバケの足を見る技術」と呼んでいます。

 

人のぼやきに敏感になる、困りごとを察知する感覚を日々のメモで鍛えることです。そしてファンに解決策を伝えていくこと、ブランド戦略とはコミュニケーション戦略なのです。

 

ビジネスは「つくる力」、「売る力」、「管理する力」でできています。このうち小さな会社に不足しているのは「売る力」です。ブランドづくりとはファンづくりだと説明しましたが、ファンを生む一番簡単な方法が「使命感を持って楽しく仕事をする」ことです。

 

そんな姿をお客様だけでなく、職場の仲間にも地域の人たちにも見せていくことです。使命感を持つには立ち位置を決めること、すなわちビジョン(=進むべき方向)を持つことです。

 

ビジョンとは、「やりたいこと」、「なりたい姿」です。これを箇条書きにしてみましょう。ビジョンができたら、ブランド化した後の姿をイメージします。

 

ブランドづくりにおける会社の方向性は、家づくりで言えば「土台」にあたります。園芸で言えば「土づくり」でしょう。土台がぐたついていたらいい家は建ちません。土が良くなければ種を植えて世話をしても花がきれいに咲くことはありません。

 

まずは「土台」にあたるビジョン(=会社の方向性)をしっかり築くことです。なりたい姿がはっきりしたら、コーポレートメッセージを作りましょう。

 

「こういう姿をめざす」、「こうありたい」という姿と、実際に「こう思われている姿」に差があることが問題です。その差を埋めていくのが「ブランド戦略」と言えます。

 

コーポレートメッセージ「誰に対して」、「何をする」という形で、「事業説明型」のものは分かりやすいと思います。その他にも、「ビジョン表現型」「他とは違うぞ型」などもあります。

 

次に考えるべきは「ブランドプロミス」です。売り手が買い手に約束していることを、ブランド戦略の世界では「ブランドプロミス」と言います。

 

本書の構成の最後は「デザイン」について書かれていますが、「伝わらなければ何もないと同じ」ということです。村尾さんは「世界観のスクラップブック」を作って、合うもの合わないものをビジュアル化することを提唱しています。

 

これをするとブレがなくなります。さらに「ブランドガイドライン」を作ることを勧めています。これは、ブランドになるために必要なことをまとめたルールブックです。

 

小さな会社や個人は、大企業に比べて地域に根差しているケースがたくさんあります。ブランドづくりによって「小さくてもキラリと光る会社」になることはそれほど難しくはありません。

 

皆さんもぜひ、ブランドづくりによって地域を元気にする事業に取り組んでみませんか。

 

では、今日もハッピーな1日を!