「朝日新聞は、なぜ消費税反対から賛成へと転じたのか。」― 日本を代表する新聞社と財務省。その両者の関係を、消費税というテーマから読み解き、日本経済の停滞、格差拡大、少子化、そして大手メディアの報道姿勢までを問う刺激的な一冊があります。

本日紹介するのは、大阪府出身、元国税調査官として10年間、主に法人税調査に従事した後、経営コンサルタント、フリーライターとして税制や財政、経済問題について数多くの著作を発表している大村大次郎(おおむら・おおじろう)さんが、消費税をめぐる財務省と朝日新聞の関係を独自の視点から検証した、こちらの書籍です。

大村大次郎『朝日新聞が財務省の犬になった日』(夕日書房)

 

本書の出発点は、朝日新聞の消費税に対する論調の変化です。著者によれば、朝日新聞はかつて消費税導入や増税に批判的な立場を取っていましたが、ある時期から消費税を容認・支持する方向へ大きく変化したといいます。

なぜ、そのような「翻意」が起きたのか。そこに財務省との関係はなかったのか。さらに、新聞への軽減税率適用をめぐる問題も含め、財務省と大手メディアの利害関係を追究していきます。

本書ではさらに、消費税が日本経済、家計、格差、少子化、中小事業者にどのような影響を与えてきたのかについて、著者独自の視点から論じています。

したがって本書を読む際には、消費税や財政政策をめぐる評価には複数の立場があることを踏まえ、著者の問題提起の一つとして読む姿勢も重要でしょう。

本書は以下の6部構成から成っています。

1.財務省が消費税にこだわる理由

2.財務官僚と朝日新聞の攻防

3.国家権力を駆使した財務省の反撃

4.朝日新聞と財務省は「同じ穴のムジナ」

5.そして日本は格差社会になった

6.日本を壊す二匹の怪物

 

本書の前半では、財務省がなぜ消費税を重視するのか、そして朝日新聞との関係がどう変化したのかについて、以下のポイントを説明しています。

◆ 財務省が安定した税収を確保できる消費税を重視してきた背景を分析している

◆ 朝日新聞はかつて消費税に批判的だったが、途中から論調が変化した

◆ 変化の背景に、財務省との緊張関係や利害の接点があったのではないかと問題提起

◆ 税制をめぐる政策決定には、官僚組織、政治、経済界、メディアなど複数の主体が関与

◆ 消費税を単なる税率の問題ではなく、「誰が負担し、誰が利益を得るのか」という構造から見る必要がある

 

この本の中盤では、財務省と朝日新聞の攻防や、軽減税率をめぐる関係について解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 財務省が強い政策立案力や情報力を持つ官僚組織である

◆ 朝日新聞との関係について、税制や報道をめぐる利害が交差した可能性

◆ 新聞への軽減税率適用は、メディアと税制当局の関係を考える象徴的なテーマ

◆ メディアが権力を監視する立場ながら、自らも制度上の利害当事者になり得る矛盾

◆ 「何を報じるか」だけでなく、「何を報じないか」もジャーナリズムの姿勢を判断する重要な材料

 

本書の後半では、消費税と日本経済、格差社会、そして政治・官僚・メディアの構造について考察しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 消費税の負担が家計や中小事業者に重くのしかかり、経済停滞の一因になった

◆ 世界各国の付加価値税と比較し、日本の税制や財政運営の特徴を検討

◆ 格差拡大や少子化など、日本社会の構造問題と税制との関係を問い直し

◆ インボイス制度も、小規模事業者への影響という観点から批判的に検証

◆ 政治、官僚、経済界、マスコミが相互依存する構造こそ、日本社会を弱体化させている

 

本書を読んで最も考えさせられるのは、税制そのもの以上に、「誰が税制をつくり、誰がそれを報じるのか」という問題です。

消費税については、社会保障財源として必要だという立場もあれば、逆進性が強く家計消費を抑制するという批判もあります。財政健全化を重視する考え方と、景気や国民生活を優先して減税すべきだという考え方もあります。

本書のもう一つの大きなテーマは、メディアの独立性です。新聞やテレビには、本来、政治や官僚、企業を監視する役割があります。しかしメディア自身も企業であり、税制や規制、行政との関係から完全に自由ではありません。

その意味で、「報道機関自身が利害関係者になった時に、どこまで権力を監視できるのか」という本書の問いは重要です。

私は本書の価値は、「消費税は必要か不要か」という単純な二択を超えて、税制・官僚・政治・メディアの関係を考えるきっかけを与えてくれることにあると感じました。

税金を考えることは、国家と国民の関係を考えること。メディアを考えることは、民主主義の情報基盤を考えることです。

消費税や日本の財政問題に関心がある人はもちろん、官僚組織とメディアの関係、ジャーナリズムのあり方、日本経済の長期停滞について別の角度から考えてみたい人にも、ぜひ読んでほしい一冊です。

YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、人生100年時代の働き方、定年後キャリア、ひとり起業、資産形成やライフスタイルなど、仕事と人生を豊かにする情報を発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。

https://www.youtube.com/channel/UCIwJA0CZFgYK1BXrJ7fuKMQ

では、今日もハッピーな1日を!【4211日目】