「人生は“移動距離”で決まるのか?」——そんな問いから、現代日本における “移動格差” と階級社会の実像に鋭く迫った一冊があります。
本日ご紹介するのは、1996年生まれ、長野県出身で、長野大学環境ツーリズム学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科で博士号を取得(社会学)し、現在は国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員・講師として地域を超えた人の移動と持続可能なまちづくりを研究する社会学者・伊藤将人さんが著した、こちらの書籍です。
伊藤将人『移動と階級』(講談社現代新書)
この本は、「通勤・通学」や「観光」「移民」「気候変動」など、私たちが日常的に行う “移動” を切り口に、現代社会にひそむ分断や不平等の構造を、データと社会調査に基づき鋭く描き出した社会分析の書です。
本書は以下の4部構成から成っています。
1.移動とは何か?
2.知られざる「移動格差」の実態
3.移動をめぐる7つの論点
4.格差解消に向けた5つの観点と方策
この本の冒頭で著者は、「移動は当たり前ではなく“格差”である」と述べ、個人の選択や自由の問題ではなく、構造的な制約や不平等として“移動”を見るべきだと指摘しています。
本書の前半では、「移動とは何か?」および「知られざる移動格差の実態」について、以下のポイントを解説しています。
◆ 現代社会において“移動”は生活・仕事・学び・余暇すべてに関わる基盤であること
◆ しかし、移動の自由度には個人差があり、特に経済・ジェンダー・地域と密接に結びついていること
◆ 半数近くの人が「自由に移動できない」と感じており、3人に1人が他人の移動を「羨ましい」と思っている現実
◆ “移動”にはコストと心理的な壁があり、すべての人にとって平等な資源ではないこと
◆ 著者の独自調査によって明らかになった“移動階級”という新たな社会構造の輪郭
本書の中盤では、「移動をめぐる7つの論点」として、移動の不平等がどのように社会に根を張っているかが明快に語られています。主なポイントは次の通り。
◆ 「移動は成功をもたらす」は本当か?という問いへのデータ分析
◆ 移動に内在する「ジェンダー格差」や、女性に偏る移動負担の現実
◆ 気候危機と移動制約の関係——災害と都市・農村の移動条件の差
◆ 移動と都市計画の失敗、公共交通の衰退による地方の孤立化
◆ 移動を通じて形成される“見えない階級”と社会的ラベリングの危険性
本書の後半では、「格差解消に向けた5つの観点と方策」が提案されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 「移動の機会」を制度的に保障する公共交通の再構築
◆ 「余白のある都市計画」による移動の自由の確保
◆ 教育・雇用・余暇における移動支援策の重要性
◆ 「関係人口」や「観光」による都市と地方の新しい関係性づくり
◆ 社会が移動の不平等を認識し、多様な生き方を包摂する文化の育成
この本の締めくくりとして著者は、「人間の自由は、移動の自由に支えられている。だからこそ、移動格差の解消は、“自由と平等”を問い直すことに直結する」と述べています。
あなたも本書を読んで、何気ない「移動」の裏にある社会の構造と分断を見つめ直し、自らの生き方や選択の自由について、改めて考えてみませんか?
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では、今日もハッピーな1日を!【3747日目】