書評ブログ

『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』

「日本のビジネスパーソンは、世界的に見ても圧倒的に学びの習慣がありません。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、上智大学大学院総合人間科学研究科社会学専攻博士前期課程修了NHK文化放送研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、パーソル総合研究所入社、労働・組織・雇用に関する多様なテーマの調査・研究を行う同社・上席主任研究員小林祐児さんが書いた、こちらの書籍です。

 

小林祐児『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』(光文社新書)

 

この本は、企業で従業員のリスキリングや学び、教育訓練について考えている人事・経営者や現場マネジャーのような方々に向けて、「リスキリングを推進といってもどうすればいいかわからない」「辞意ぎゅいんが自発的に学んでくれない」といった課題を解決するために書かれた本です。

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

1.「リスキリング」の流行とその課題

2.「学ばなさ」の根本を探る──「中動態的」キャリア論

3.「変わらなさ」の根本を探る──変化を抑制するメカニズム

4.リスキリングを支える「三つの学び」

 

5.「工場」から「創発」へ──日本はリスキリングをどう進めるべきか

6.「学びの共同体」の仕組み──企業を「キャリアの学校」にする

7.「学ぶ意思の発芽」の仕組み

8.これからの企業における「学び」の方向性

 

この本の冒頭で著者は、「本書での議論のベースを提供するのはデータです。過去の幅広い実証的な科学の知見に、これまで筆者が様々な研究者と実施してきた日本での調査のデータを合わせて議論していきます。」と述べています。

 

 

本書の前半では、「リスキリングの流行とその課題」について、以下のポイントを説明しています。

 

◆ 日本はGDPにおける人材投資の規模が先進国の中で極めて低い

◆「工場モデル」の欠点は、リスキリングの実践が「個」にフォーカスされ過ぎでいる

◆ 「工場モデル」の欠点は、学ぶ人しか学ばない「学びの偏在性」

◆「スキルの明確化」を出発点にしてきれいごとになっている

◆ スキルの「獲得」と「発揮」という重要プロセスが素朴すぎる 

 

◆ リスキリングのための動機づけを「仕組み化」する

◆ 日本人の「学ばなさ」と「変わらなさ」がハードル

◆ アンラーニング

◆ ソーシャルラーニング

◆ ラーニング・ブリッジ

 

 

この本の中盤では、「学ばなさの根本を探るー中動態的キャリア論」「変わらなさの根本を探るー変化を抑制するメカニズム」およびリスキリングを支える三つの学び」について解説しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ 日本人は「何となく」学んでいない

◆ 企業は「学ばせたくない」ので、共犯関係

◆ 日本人キャリアの「受け身の態度」より「中途半端さ」が問題

◆ ほどほどキャリア、地頭重視、仕事は運次第が「学ばなさ」に直結

 

◆「変化抑制意識」は波及する

◆「変化適応力」を促進する、①目標達成志向、②新しいことへの挑戦にゃ学び、③興味の柔軟性

◆ 捨てる学びの「アンラーニング」

◆ 巻き込む学びの「ソーシャルラーニング」

◆ 橋渡す学びの「ラーニング・ブリッジ」

 

◆ アンラーニングを促進する「限界認知」

◆「社会関係資本」がスキルや能力に直結

◆ 他社との関わりは、①真似し合い、②教え合い、③創り合い、④高め合い

◆ 外からくる「炭火型」と心のうちに火をつける「ろうそく型」の動機づけ

◆ 社会ネットワークでつながる知、ラーニング・ブリッジ

 

◆ 世界で最も治安が良く、他社を信頼しない日本

◆ 孤独が学びを遠ざける

◆ 社会関係資本の薄さ、社会開拓力のなさが問題

◆ 企業というプレーヤーが重要

 

 

本書の後半では、「工場から創発へー日本はリスキリングをどう進めるべきか」「学びの共同体の仕組みー企業をキャリアの学校にする」「学ぶ意思の発芽の仕組み」およびこれからの企業における学びの方向性」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ リスキリングの本質は、他社を含んだ環境の相互作用の中で起こる「創発」的な営み

◆「変化抑制」に対する処方箋:①変化報酬、②挑戦共有

◆ 掛語でではなく、「仕掛け」や「仕組み」を

◆ 学びのコミュニティ化

◆ 対話ジョブマッチング・システム

 

◆ 復習主義から予習主義へ

◆「学ばないこと」を選択にして学ぶ

◆「わたしの学び」から「学びのわたしたち化」へ

◆ 社会関係資本のベースには「善意」がある

◆「社会」は最後のブルーオーシャン

 

この本の締めくくりとして著者は、「社会への関心の強さや、それを自分たちで変えられるという効力感について、『ソーシャル・エンゲージメント』という概念を用いながら、探求しています。」と述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、個人の「やる気」よりも組織の「仕組み」が大切であるリスキリングの本質を学び、学びを実践していきませんンか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3144日目】