書評ブログ

『日本の分断~切り離される非大卒若者(レッグス)たち~』

「団塊の世代の退出を機に、新しいタイプの分断社会が到来する」という見通しを述べて、日本の「分断」を分析した本があります。

 

 

本日紹介するのは、1966年島根県生まれ、大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了、現在は大阪大学大学院人間科学研究科教授吉川徹さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

吉川徹『日本の分断~切り離される非大卒若者(レッグス)たち~』(光文社新書)

 

 

この本は、これまで日本社会の中心にいた「団塊世代」が75歳以上となって社会活動の主役を退く中で、高齢者や未成年者を支える現役世代6,025万人(総人口の約半分)を、40~50代の壮年層(3,305万人)20~30代の若年層(2,720万人)に分けてそれぞれの特徴や分断の状況について分析している書です。

 

 

ちなみに、現役世代に入らない2015年調査時点での60歳以上高齢者は4,000万人、未成年者は2,200万人です。

 

 

 

本書は以下の6部構成から成っています。

 

 

1.忍び寄る次の時代

 

2.現役世代の再発見

 

3.学歴分断社会

 

4.人生の分断

 

5.分断される「社会の心」

 

6.共生社会に向かって

 

 

 

この本の冒頭で著者は、「分断」という言葉は、格差や階級よりも強い響きを持っていて、その特有さを以下の「分断の四要件」として提示しています。

 

 

◆ 境界の顕在性

 

◆ 成員の固定性

 

◆ 集団間関係の隔絶

 

◆ 分配の不均等

 

 

つまり、分断社会とは、社会に顕在するアイデンティティ境界に基づいて、相互交流の少ない人々の間で、不平等が固定している状態だ、と定義することができます。

 

 

 

団塊世代は、1947年~49年生とその周辺に生まれた人口の多い生年世代で、その数800万人~1,000万人と言われていますが、いよいよ75歳以上の後期高齢者になることで、社会的プレゼンスが低下し、「新しいタイプの分断社会が到来する」というのが著者の見通しです。

 

 

 

そうなると日本社会の主力メンバーは、1955~94年生まれの40年生という40年間の幅がある現役世代で、この本で分析対象にしているのは、この世代6,025万人ということになります。

 

 

 

この「現役世代」における分断は、以下の3つの基準によって分けられた結果だと著者は述べています。

 

 

1.生年区分

 

2.ジェンダー境界

 

3.学歴分断線

 

 

 

さらに、壮年層と若年層の分断については、1990年代の宮台真司2010年代の古市憲寿二人の著書を紹介し、その若者論と時代背景を解説しています。

 

 

 

 

続いて、現役世代を3つの基準で分断した結果、「8人のレギュラーメンバー」として、以下の分類を提示しています。

 

 

◆ 若年非大卒男性(676万人)11.2%

 

◆ 若年非大卒女性(652万人)10.8%

 

◆ 若年大卒男性(711万人)11.8%

 

◆ 若年大卒女性(682万人)11.3%

 

 

 

◆ 壮年非大卒男性(1011万人)16.8%

 

◆ 壮年非大卒女性(1062万人)17.6%

 

◆ 壮年大卒男性(649万人)10.8%

 

◆ 壮年大卒女性(582万人)9.7%

 

 

 

これら8フループ間の稼得力、家計、仕事、職業威信、結婚、子ども、家族、居住地域などの違いや特徴を分析しています。

 

 

データは、社会学者10年ごとに定点調査をしている「SSM2015」および「SSP2015」という2つの大規模階層調査におけるデータを活用しています。

 

 

 

結論として、この本では「若年非大卒男子」(レッグス)が、どの指標で見ても「勝ち星」が付かず、その他のグループの人々と切り離されつつある、ということです。

 

 

 

これが日本の「分断社会」の実態で、大きな基準が大卒か非大卒かという「学歴による分断」ということです。

 

 

 

そういう意味で、分断が進みつつある日本は社会が危険な状態になるリスクがあり、共生社会に向かって様々な取り組みが期待される、と著者は述べています。

 

 

 

あなたも本書を読んで、「日本の分断」について、改めて考えてみませんか。

 

 

 

2020年11月20日に、大杉潤のYouTubeビジネススクール【第164回】分断社会で切り離される「レッグス(若年非大卒男性)たち」にて紹介しています。

 

 

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!