書評ブログ

定年前起業に役立つ『世界一タフな職場を生き抜く人たちの仕事の習慣』

三流大学卒、埼玉のブラック企業でOLをしていた環境から、丸の内の外資系金融に転職し、今はシンガポールで働く女性が書いたブログが話題になっています。

 

本日紹介するのは、「死ぬほどキツイけど死ぬほど楽しい外資系」の職場の実態を、OLの目から軽快なタッチで書いた、こちらの本です。

 

ずんずん『外資系OLは見た!世界一タフな職場を行き抜く人たちの仕事の習慣』(KADOKAWA)

 

この本は、外資系企業での働き方の実態をレポートしながら、「タフな職場でいかにして生き抜くか」を記した本です。書きぶりが切れ味鋭く、読んでいて以下のふたりの著書に似ていると思いました。

 

1.ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)
2.南場智子『不格好経営-チームDeNAの挑戦』(日本経済新聞出版社)

 

 

 

 

ふたりとも、バリバリの外資系に勤務経験があるキャリア・ウーマンで、そういう意味では著者に似たところがあるかも知れません。とくに歯切れの良い言い方と、落ち込むような経験も笑いに変えてしまうタフさがあります。

 

読んでいる方からすると、それが心地よくて、共感を得るのかも知れません。本書は、以下の6部から構成されています。

 

 

1.採用; 三流大卒でも外資系金融に入れる!
2.出世; 「実力主義」という大ウソ
3.働き方; 金、金、金、そして夢
4.解雇; クビは日常茶飯事です!
5.エリート?; 海外で出会った人々のリアル
6.JAPAN; 日本企業はかなり変だった!

 

 

まず本書の冒頭に出てくる「外資系で採用される人、3つのパターン」が面白いです。以下の3タイプです。

 

 

1.本当に優秀な人採用
2.ルックス採用
3.キャラ採用

 

 

著者のずんずんさんは3番目の「キャラ採用」ということですが、「キャラ」とはすなわち、「ヒューマンスキル」だそうです。外資系金融であっても、高い人間性が求められる。

 

「ヒューマンスキル」とは、初対面の人ともすぐに打ち解けられて、自分の考えを伝え、相手の考えを引き出し、相手の立場になれる・・・。つまりはさわやかで人の話をよく聞き、思いやりにあふれている人です。

 

それから、外資系企業の採用面接で重要なことは、何といっても「職務経歴書」です。そこに書かれた「首尾一貫したキャリア」ということです。

 

嘘を書いてはいけませんが、「はったりはかましていい」のです。このエリアを伸ばしていきたいから、このエリアを経験したいから転職する、といったポジティブ転職理由を付け加えることで、キャリアの首尾一貫性を強調するのがコツです。

 

それから、外資家の場合は「能力の掛け算」で採用を決めます。ここで必要なのは「スキルセット」という考え方です。企業が求めている人材というのは、専門知識を持ちつつ、何でもできる人です。

 

つまり複数の専門知識を持ちつつ、何かしらに特化した実務能力を持つ人です。例えるなら、「IT知識×金融知識×営業能力」だったり、「会計知識×金融知識×経理実務能力」だったり、「英語能力×金融知識×デザイン能力」など。

 

ベースとなる専門知識を10としたら、その他の能力が5~7だったとしても、掛け算式に能力を組み合わせることで、自分の価値を高めることができます。

 

この組み合わされたスキル、つまりはスキルセットによって、外資系企業は使える人間かそうでないかを判断していきます。

 

そのため、英語力が低い人材であっても、他の能力が突出している人材であれば総合力から採用されることになります。

 

また、外資系企業で出世できる人の条件としては以下の2つを挙げています。

 

 

1.自分を前面に出せる人
2.上司に媚を売ることができる人

 

 

すべての行動が、上司の利益につながるように動かなければいけないのです。また、本書で面白かったのは、ずんずん流「あなたが30歳までに学ぶべき7つの教訓」です。以下の7つです。

 

 

1.金がだいたいの問題を解決してくれることを知る
2.自己愛と自意識をコントロールする方法を知る
3.誰もあなたのことなど気にかけていないことを知る
4.自分の感情を分析する訓練をする
5.身体はやばいぐらい鍛えろ
6.孤独と友達になる
7.自分の限界は年齢で決まるわけではないことを知る

 

 

外資系金融のようなタフな職場やシンガポール勤務などの変化の激しい職場では、切り替えが早く、苦境を笑いに変えるくらいのタフさがなければやっていけないでしょう。

 

そういう意味では、著者のずんずんさんや、前述のちきりんさん、南場智子さんは外資にピッタリのキャラクターだと言えるでしょう。一般のサラリーマン、OLには難しい働き方に見えるかも知れませんが、起業家としては普通ではないでしょうか。

 

起業する場合ととても近い感覚の働き方、考え方だと感じました。いつクビになるか分からない緊迫した職場環境というのは、ある意味、いつ食べられなくなるか分からないフリーランスの起業家と通じるものがあります。

 

定年前起業を志す方々に、心構えの教科書として、ぜひ本書の一読をお薦めします。

 

では、今日もハッピーな1日を!