書評ブログ

『新型格差社会』

「コロナ・パンデミックは社会のあり方を根底から変えつつあるのではないか、そして、その実感をほとんどの方が持っているのではないか」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1957年生まれ、東京大学文学部卒業、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学、現在は中央大学文学部教授(専門:家族社会学)山田昌弘さんが書いた、こちらの新刊新書です。

 

山田昌弘『新型格差社会』(朝日新書)

 

 

この本は、コロナ禍によって加速するだろう日本社会の格差を、社会学の視点から5つに分けて指摘し、日本社会のかたちがその潮流に吞み込まれて不可逆的に変わっていくとしても、多くの人の「海図」となり、今後のライフデザインの公平な道標になることを願って書かれた書です。

 

 

本書は以下の7部構成から成っています。

 

1.はじめに-コロナ禍による不可逆的変化、階級社会の懸念

2.家族格差~戦後型家族の限界

3.教育格差~親の格差の再生産

4.仕事格差~中流転落の加速化

5.地域格差~地域再生の生命線

6.消費格差~時代を反映する鏡

7.おわりに-令和の格差のゆくえ

 

 

この本の冒頭で著者は、「日本社会で可視化されていなかった二つのことをコロナ禍が顕わにした」「一つは、今まで隠されてきた、というよりも、見ようとしてこなかった『格差』がはっきりと見えるようになったことです。」「もう一つは、『過去の社会に戻ることはできない』という予感がすべての日本国民に広く行き渡ったことです。」と述べています。

 

 

本書の前半では、「格差社会」というものが、経済面だけではなく、実際には「家族」「仕事」「教育」といった社会の礎を築く要素にも広がっていること、および、まず「家族格差」について考察しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ コロナ禍による自殺者数の増加、とくに若年女性の自殺者数増加

◆ コロナ禍がもたらす影響は「下層」で生きる人々にとってより大きい

◆ 戦後型家族(ホットは仕事、妻は家事)の限界

◆ 家族間の愛情格差も広がっている

 

 

この本の中盤では、「教育格差」「仕事格差」について論じています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ 世帯減収による子どもの学習格差

◆ コロナ禍が広げる教育力の差

◆ デジタル格差、コミュ力格差、英語格差

◆ コロナ禍で可視化された親の格差

◆ 親の所得が子ども世代に影響して格差が再生産

 

◆ 新しいデジタル経済で働く人と、旧来のものづくりや対人サービス業で働く人の格差

◆ 資産を持つ者と持たない者の格差

◆ 正規雇用と非正規雇用に格差(とくに観光業界と飲食業界に打撃)

◆ エッセンシャルワーカーとリモートワーカー

◆ 収入格差、生活格差から「中流転落」へ

 

 

本書の後半では、「地域格差」について、以下のコロナ禍による格差広がりを指摘しています。

 

◆「自由な働き方」が選択できるようになった結果、首都からの転出超過に

◆ 土地の「勝ち組」「負け組」(東京へのアクセスの容易さ)

◆「住宅すごろく」が機能しない

◆「教育」と「年収」「地価」は密接に結びついている

◆ 自己責任論がつくる階級社会

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「消費格差」について整理しています。ポイントは以下の通り。

 

◆ アイデンティティ消費(承認のための消費)

◆ 家族消費から個人消費へ

◆ 積極的な幸福が、人間の幸福感には必要

 

 

あなたも本書を読んで、家族社会学の第一人者が指摘する「新型格差社会」の実態を学んでみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2526日目】