「どの節税本を読んでも、目先の税金を安くする方法を書いているだけで、将来まで含めて支払う税金のトータルについてはほとんど触れられていません。」と述べて、節税を勧める以上、社会保険料の負担や将来もらえる年金で損をさせてはいけない、と提唱している税理士が書いた本があります。
本日紹介するのは、1975年生まれ、東京大学農学部卒業後、名古屋商科大学大学院修了、仏教講師、会計事務所勤務を経て、税理士事務所を経営する税理士、中小企業診断士の斎尾裕史さんが書いた、こちらの書籍です。
斎尾裕史『東大卒税理士が教える 会社を育てる節税の新常識』(同文館出版)
この本は、世の中で「節税」と言われている方法の問題点を指摘するとともに、本当の意味で社長が得をする、手取りを増やすことができる方法を解説している書です。
本書は以下の9部構成から成っています。
1.はじめに
2.社長の手取りが増える新・節税法
3.福利厚生費の徹底活用法
4.間違った節税から脱却する方法
5.生命保険をおトクに活用する方法
6.インボイス制度の節税への影響
7.1円でも相続税を安くする方法
8.本書の節税法を実践する際の注意点
9.おわりに
この本の冒頭で著者は、「真の『節税』は社会保険料対策である」と述べています。例えば、月60万円、年間720万円の役員報酬を社長がとっている場合、所得税や住民税は73万円なのに対して、社会保険料は年間216万円(うち半分は会社負担)も払っています。
給与収入の人で年収1500万円以下の場合は、所得税・住民税の合計よりも社会保険料の方が高くなるのです。
法人の所得が800万円以下の会社であれば、法人税は21~23%程度ですが、社会保険料は30%を超えています。つまり会社で役員報酬を増やすと、会社の利益は減るので法人税は安くなりますが、それ以上に社会保険料が高くなってしまうのです。
そこで本書で提唱していることは、以下の4点です。
◆ 会社の法人所得を税率の低い800万円以下にする
◆ 役員報酬を減らして社会保険料を削減して配当でもらう
◆ 社会保険料の削減は将来もらう年金も考えて決める
◆ 法人所得800万円の範囲で法人税を払い、内部留保を増やして会社を育てる
この本の前半では、「社長の手取りが増える新節税法」および「福利厚生費の徹底活用法」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 配当は社会保険料の節減になる
◆ 役員報酬は会社の実質利益(役員報酬をゼロとした時の税引き前利益)で決める
◆ 法人所得800万円以下なら役員報酬は年間111万円~275万円程度が有利
◆ 将来もらえる年金の予想額も加えた「社長の手取り」を考えて役員報酬と配当を決める
◆ 給料で渡さず、福利厚生費で渡せば、所得税や社会保険料の節減になる
◆ 旅費規程を作成すれば、規定で決めた額の宿泊費や出張手当を支払える
◆ 社宅に住むことで、所得税等や社会保険料の大幅な節減が可能
◆ 会議や接待目的の飲食は経費にすることができる
本書の中盤では、「間違った節税から脱却する方法」および「生命保険をおトクに活用する方法」について以下のポイントを解説しています。
◆ 税金を払うタイミングを遅くすることを「税の繰り延べ」という
◆ 税の繰り延べの最もオーソドックスな方法は、倒産防止共済に加入すること
◆ 生命保険も税の繰り延べ
◆ 会社で保険契約すれば、所得税等や社会保険料の負担がない
◆ 会社に入金された入院給付金等は、見舞金として本人に渡す
◆ 短期払いした医療保険を、本人名義に変更する方法もある
この本の後半で著者は、「インボイス制度の節税への影響」、「1円でも相続税を安くする方法」および「本書の節税法を実践する際の注意点」について考察しています。主なポイントは次の通り。
◆ 免税事業者は、消費税を納付しなくてよい分、利益が増える
◆ インボイス制度が導入されると、免税事業者に経費を支払っても、消費税が戻ってこなくなる
◆ インボイス制度導入後は、課税事業者を選択して商売するようになる
◆ 個人事業を会社にすることで消費税の節税をするのであれば、今が最後のチャンス
◆ 自社の株式の贈与(相続)は、後継者のみにすることが望ましい
◆ 養子縁組すると相続税が大幅に下がる場合がある
◆ 死亡保険金は一定金額まで相続税が非課税
◆ 配当をもらって自分の口座で貯金するより、会社の内部留保にして貯金する方が、いざというときに使える金額が多くなる
本書の巻末資料として、「社長の手取り合計が最大となる金額表」がパターン別に掲載されています。
会社の実質利益の水準ごとに、役員報酬をいくらにすればよいかがモデルで計算され、一目でわかるようになっているので、巻末の表を見るだけでもとてもおトクです。
あなたもこの本を読んで、会社を育てる節税の新常識を学び、経営に活かしてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2600日目】