「A書店のエッセーコーナーが老い本だらけとなっている背景には、この『世界トップクラスの高齢化率』が存在している。」「いずれにせよ高齢者達は、『書店に行って紙の本を買う人々』である。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1966年東京都生まれ、高校在学中から雑誌にコラムを連載し、大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆に専念、2003年に発表した『負け犬の遠吠え』がベストセラーとなり、婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞した酒井順子さんが書いた、こちらの書籍です。
酒井順子『老いを読む 老いを書く』(講談社現代新書)
この本は、「老い本、および老い本の著者達を検証することによって、日本の高齢者、および高齢化の今と今後が見えて来るのではないか。」という思いをもって、そう遠くないうちにやってくる高齢者としての日々に備えるために、老い本の世界を探っている書です。
本書は以下の4部構成から成っています。
1.老いの名作は老いない
2.老いをどう生きるか
3.老いのライフスタイル
4.老いの重大問題
この本の冒頭で著者は、「老い本ブームは、一過性のものではなかろう。日本では当分の間、高齢化率も平均寿命も高水準で推移することが予測されているのであり、老い本への需要もまた、高いままであり続けるに違いない。」と述べています。
本書の前半では、「老いの名作は老いない」について以下のポイントを説明しています。
◆ 迷惑をかけたくないー『楢山節考』
◆ いつか、自分もー『恍惚の人』
◆ マンガが見つめる孤独ー『いじわるばあさん』
◆ 古典の老いと理想ー『竹取物語』『枕草子』『徒然草』『方丈記』
この本の中盤では、「老いをどう生きるか」および「老いのライフスタイル」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 百歳の人間宣言ー『生き方上手』の日野原重明
◆ 定年クライシス:会社人生が終わる「生前葬」
◆ 六十代ー老人界のフレッシュマン
◆「乙女老女」は未来志向
◆ 老い本ブームの先陣を切った2冊ー『老人力』と『大往生』
◆ 一人暮らし
◆ おしゃれの伝承:おしゃれ界の老いスター
◆ おばあさんと料理
◆ 田舎への移住:テレビ朝日「人生の楽園」
作家が以前から実践していた「田舎への移住」や「2拠点生活」に関する記述は特に興味深く、次の「老い本」が紹介されています。
これら書籍のコンセプトは、拙著『定年ひとり起業 生き方編』(自由国民社)で紹介した「埼玉と伊豆の2拠点生活の醍醐味」と共通する部分が多く、感銘を受けました。
本書の後半では、「老いの重大問題」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 金は足りるのか
◆ 配偶者に先立たれる
◆「死」との向き合い方
◆ 老人と性
この本の締めくくりとして著者は、「本書を書きつつ実感したのは、老い本は、高齢者だけを読者対象にしているわけではない、という事実だった。高齢者ではないものの老いが視野に入ってきた私くらいの年頃の人もまた、老い本の読者である。」と述べています。
また、この本の巻末には、「老い本年表」として、主な老い本が出版年順に一覧として掲載されていて参考になります。
あなたも本書を読んで、百花繚乱の「老い本」ワールドを体感して、時代の変遷と今後の日本社会について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3569日目】