「年金だけで、本当に暮らしていけるのか。」人生100年時代長くなった老後を支えるうえで年金の重要性はますます高まっています。本書は、実際に年金生活を送る17人へのインタビューを通して、「年金に笑う人」「年金に泣く人」のリアルを浮かび上がらせた一冊です。

本日紹介するのは、1961年生まれ、1980年に都立中野工業高校を卒業後、ルポライターとして取材活動を続けながら、現在は不動産管理会社に勤務。2003年よりホームレス支援者やNPO関係者との交流を通じて、不況や格差社会、貧困、労働問題を長年取材し、『今日、ホームレスになった』『今日、派遣をクビになった』『今日、会社が倒産した』『今日、50歳になった』など多数の著書を手がけてきた増田明利さんが書いた、こちらの書籍です。

増田明利『今日、年金暮らしになった 定年を迎えた17人のリアルな老後』(彩図社)

この本は、年金生活者17人の実際の暮らしを通じて、老後のお金、健康、人間関係、孤独、楽しみといったテーマを具体的に描きながら、「年金生活の現実」を考えるルポルタージュです。

 

本書は以下の5部構成から成っています。

1.いつもお金の心配ばかり

2.慎ましく生きていく

3.病気で年金が消えていく

4.老後の孤独と楽しみ

5.年金で豊かに暮らすには

 

本書の前半では、年金生活に入った人たちが抱えるお金の不安や、現役時代との生活の変化について紹介されています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 年金収入だけでは毎月の生活費をまかないきれず、貯蓄を少しずつ取り崩して暮らす人がいる

◆ 現役時代と比べて収入が大きく減る一方、住居費、光熱費、食費など固定的な支出は簡単には減らせない

◆ 「老後はなんとかなる」と十分な準備をしなかったことで、年金生活に入ってから家計の厳しさを実感するケースがある

◆ 収入が限られる中で、外食や旅行、趣味などを控え、日々の小さな支出を見直しながら暮らしている

◆ 同じ年金生活者でも、現役時代の働き方、退職金、持ち家の有無、貯蓄額などによって生活水準には大きな差が生まれている

 

この本の中盤では、慎ましい暮らしや健康問題が、年金生活にどのような影響を与えるのかが描かれています。主なポイントは次の通り。

◆ 年金額が多くなくても、生活水準を無理に上げず、支出を管理することで穏やかに暮らしている人もいる

◆ 持ち家があるか、家賃負担があるかによって、老後の家計には大きな違いが生じる

◆ 高齢になるほど医療費や薬代など健康関連の支出が増え、年金の多くが医療費に消えていくケースがある

◆ 病気や介護は予測しにくく、それまで成り立っていた老後の家計を一気に崩す可能性がある

◆ 「お金だけ」で老後を考えるのではなく、健康を維持すること自体が重要な老後対策になる

 

本書の後半では、老後の孤独や楽しみ、そして年金生活を豊かにするためのヒントが紹介されています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 会社を辞めると、それまでの人間関係が急速に薄れ、孤独を感じる人も少なくない

◆ 一方で、趣味や地域活動、友人との交流など、会社以外の居場所を持つ人は年金生活を前向きに楽しんでいる

◆ 収入が多くなくても、自分に合った楽しみを見つけ、生活にメリハリをつけることで幸福感は高められる

◆ 年金額そのものだけでなく、住まい、健康、貯蓄、人間関係などを総合的に整えておくことが老後の安心につながる

◆ 「いくらもらえるか」だけでなく、「そのお金でどう暮らすか」を早い段階から考えておくことが重要になる

 

本書で最も印象に残るのは、「人生いろいろ、年金生活者もいろいろ」という現実です。年金について語られるとき、平均受給額や標準的な夫婦世帯のモデルケースなど、どうしても「平均値」で説明されることが多くなります。

本書の17人の声を読むと、「年金だけで暮らせるか」という問いには、一つの答えがないことがよくわかります。年金額が多くても、生活水準が高ければ苦しくなります。

逆に、年金額がそれほど多くなくても、住宅費が少なく、健康で、支出をコントロールできれば、穏やかな暮らしを送ることもできます。

つまり重要なのは、「年金はいくらもらえるのか」という情報だけではなく、自分自身の家計全体を把握することです。また、本書で描かれる「高齢者格差」は、お金だけの問題ではありません。

私自身も、定年後のライフスタイルは「住む場所」「付き合う人」「時間配分」の3つで大きく決まると考えています。そこに「お金」と「健康」が土台として加わります。

年金は人生後半を支える大切な収入源ですが、それだけで幸せな老後が決まるわけではありません。年金をベースに、必要な生活費、余暇費、医療・介護への備えを分けて考え、無理のない取り崩し計画を持つことが重要でしょう。

本書は、数字だけではわからない「年金生活の現場」を知ることができる点に大きな価値があります。

これから定年を迎える50代・60代の方はもちろん、すでに年金生活に入った方、親の老後が気になっている方、そして人生後半のお金と暮らしを現実的に考えたいすべての方に、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4183日目】