昨日に続き、英フィナンシャル・タイムズ記者によるフェアかつ徹底した取材で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」でもなく、「衰退必至」でもない日本の真の姿を描いた書の下巻を紹介します。
本日紹介する書も、英国ジャーナリストであるデイビッド・ピリングさんが書いた、こちらの書です。
デイビッド・ピリング日本-『喪失と再起の物語(下)』(早川書房)
この本は、昨日紹介した上巻の続編で、以下の8部構成(上巻の8部に続き第9部~第16部)から成っています。
9.ポスト成長期の日本-祥氏高齢化を超えて
10.約束された道-模索する若者たち
11.几帳面の向こう側から-変化する男女関係
12.日本以外のアジア-歴史問題の呪縛
13.異常な国家-二人の総理大臣の挑戦
14.福島原発事故の余波-それが明らかにしたもの
15.市民たち-新たなる社会の胎動
16.津波のあとで-復興へと歩む人々
本書では上巻に比べて、より人々の内面に切り込んだ記述、分析が主になっています。とくに興味深いのが、少子高齢化が急速に進む日本の対応と、模索する若者たちの意識の変化です。
少子高齢化については、日本では以前から議論され、対策も練られてきましたが、財政赤字の拡大などにより打てる対策の選択肢がどんどん狭まりつつあります。
移民拡大や出生率の増加は難しく、今やシニア社員の退職を遅らせることしか有効な手立てが無くなりつつあります。
また、数年前にニューヨーク・タイムズに掲載された一本のコラムが紹介されていて興味深い分析がなされています。それは、早稲田大学教授で文芸評論家の加藤典洋さんの「肩の荷を下ろして生きる日本的生活の知恵」という見出しのコラムで、「低成長礼賛」という変わった主張です。
中国が初めて日本のGDPを抜いて世界2位になった直後の時期のコラムで、「日本の景気が横ばい状態にあるのはかえって喜ばしい」と主張しています。
「日本は世界2位どころか5位や15位である必要さえない、そろそろもっと大切なことに目を向けようではないか」と加藤さんはコラムで呼び掛けています。古い「成長神話」の考え方に対する挑戦で、勇気ある主張と著者は驚きを表現しています。
また、若者の意識については、小説家の村上春樹や、新進気鋭の社会学者・古市憲寿の主張を採り上げていて、それぞれの著書も紹介して興味深い分析を展開しています。内容はぜひ本書をお読みください。
また本書の最後では、福島原発事故や震災後における日本社会の変化について、再度考察が加えられています。
さらに日本語版のみに「あとがき」が追加されて、「震災は日本を変えたのか」という見出しで、アベノミクスに対する評価や歴史観・外交課題について考察しています。
あなたも本書を通読して、現代の日本社会の課題や方向性について、よく考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を