「利他的に行動すると、結局はまわりまわって自分に利益が戻ってくるしくみが人間のしゃかいにはずっとむ見込まれていた。だから、このしくみが働いているかぎりは、ときには利他手にに行動する人間のほうが、(中略)自分のことしか考えていない人間よりも結局は大きな利益を獲得することができたので、人間の利他性が発達してきたのだ」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1948年名古屋市生まれ、一橋大学社会学部、同大学大学院を経て、1980年ワシントン大学哲学博士、北海道大学助教授、ワシントン大学助教授を経て、北海道大学大学院文学研究科教授、同大学社会科学実験研究センター長を歴任した社会心理学者の山岸俊男さんが書いた、こちらの書籍です。
山岸俊男『日本の「安心」はなぜ消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点』(集英社インターナショナル)
この本は、人間の利他性についての科学的な研究の成果を、現代の日本社会が直面する問題にあてはめてみたときに見えてくるものについて記した書です。
本書は以下の10部構成から成っています。
1.「心がけ」では何も変わらない!
2.「日本人らしさ」という幻想
3.日本人の正体は「個人主義者」だった!?
4.日本人は正直者か?
5.なぜ、日本の企業は嘘をつくのか
6.信じる者はトクをする?
7.なぜ若者たちは空気を読むのか
8.「臨界質量」が、いじめを解決する
9.信頼社会の作り方
10.武士道精神が日本のモラルを破壊する
この本の冒頭で著者は、「モラルに従った行動をすれば、結局は自分の利益になるのだよという利益の相互性を強調する商人道こそが、人間の利他性を支える社会のしくみを作ることができると私は考えています。」と述べています。
本書の前半では、「心がけでは何も変わらない!」「日本人らしさという幻想」および「日本人の正体は個人主義者だった!?」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 精神論は思考停止と変わらない
◆ 社会問題を解決するのは、人間性の研究から
◆「心の教育」では問題は解決しない
◆ 「お説教」では世の中は変わらない
◆「日本人らしさ」とは生き抜くための戦略だった
◆ 人が見ていないところでは態度が変わる日本人
◆ みんなは集団主義だが、自分は個人主義と思っている日本人
◆ 他人を信頼するアメリカ人、信頼しない日本人
この本の中盤では、「日本人は正直者か?」「なぜ、日本の企業は嘘をつくのか」「信じる者はトクをする?」および「なぜ若者たちは空気を読むのか」について考察しています。主なポイントは次の通り。
◆ 集団主義社会とは「信頼」を必要としない社会
◆「信頼する心」がないと都会生活は送れない
◆「安心」と「信頼」はどこが違うか
◆ 集団主義社会が実現させた「奇跡の高度成長」
◆「安心社会の終わり」を告げる構造改革
◆ 不信が不信を生む
◆ 日本の企業が隠蔽・偽装に走る「ホンネ」は不信
◆ 高信頼者はシビアな観察者だった
◆ 集団主義社会では人間関係を読む力が必要になる
◆ 環境が社会的能力をつくり出す
◆ 人間の知性は何種類もある
◆ 人間の心も「心のツール」の集合体
本書の後半では、「臨界質量が、いじめを解決する」「信頼社会の作り方」および「武士道精神が日本のモラルを破壊する」について著者の見解を解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆「臨界質量」が、いじめを解決する
◆「いじめの広がり」を作り出すメカニズム
◆ 評判の力が信頼社会を作る
◆「安心社会」と「信頼社会」という2種類の社会
◆ 商人道と武士道ー相反する二つの道徳律
この本の締めくくりとして著者は、「話を論理的に展開することは、必ずしも内容の理解を進めるとは限らない」と述べています。
あなたも本書を読んで、「安心社会」と「信頼社会」の違いを理解し、現代日本の問題点を把握してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2898日目】