日本を代表する建築家の隈研吾さんと、東京大学医学部教授を定年前に退官してフリーの作家になった養老孟司さんが対談して、日本人の住まい方をはじめ、さまざまなものの見方、考え方を論じた書があります。
本日紹介したいのは、ふたりの共著という形で出版された、こちらの書です。
養老孟司・隈研吾『日本人はどう住まうべきか』(新潮文庫)
この本は、イエズス会というカトリック系の修道会が経営する、栄光学園中学・高校の先輩・後輩である、養老孟司・隈研吾のふたりが、「現場主義」という、イエズス会の思想的バックボーンを共通のベースに、さまざまな議論を展開する書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.「だましだまし」の知恵
2.原理主義に行かない勇気
3.「ともだおれ」の思想
4.適応力と笑いのワザ
5.経済観念という合理性
6.参勤交代のスゝメ
この本では、住まいを通して文明論を語り合っています。それは以下の3つのキーワードから、私たちが今一度、「家」を見つめなおすためのヒントを提供してくれます。
◆ 現場主義
◆ だましだまし
◆ ともだおれ
本書で言う「現場主義」とは、隈研吾さんが言う「建築にとっていかにロケーションが大切か」という考えです。
「だましだまし」は、森に暮らしてきた日本人ならではの感覚で、多様な木々が共生し、鬱蒼とした日本の森は見通しが悪く、向こうから何がやってくるか見えない。
つまり、予測不可能な事態を多くはらんでいるから、「だましだまし」、その場で問題に対応する必要があった、ということでしょう。
そして重要なのが、「ともだおれ」という思想で、分業社会が徹底された現在では、建築においても仕事が細分化され、バラバラに作られたパーツが集まって注文式住宅が建ちます。
かつてのように、住む人やその家の将来までを総合的に考える棟梁がいて、近隣の住人の了解のもとに家が建ち、上棟式を執り行うといった文化は薄れてきています。
それは、あらゆる意味において、責任の所在を欠くことを意味しています。これは建築だけではなく、社会全体に言えることでしょう。
本書で養老さんと隈さんが指摘する問題は、極めて鋭い示唆に富んでいます。家の中での家族とのコミュネケーション、外に出た時の共同体や世間における信頼関係、土地や自然との共生など・・・。
日本人として、身体感覚を伴う森の思想で住まいのあり方を見直すことは、これからの時代に必要なことでしょう。
あなたも本書を読んで、「住まい方」を通して、今一度、自らの生き方を見直してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を