書評ブログ

『年収1000万円「勝ち組」家庭の残酷な真実』

「どうやら、もし年収が1000万円あっても思ったほどゆとりはなさそうだ。いや、むしろ場合によってはカツカツなのではないかと。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、元慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員、現在はファイナンシャルプランナー、マネーステップオフィス株式会社代表取締役加藤梨里さんが書いた、こちらの書籍です。

 

加藤梨里『年収1000万円「勝ち組」家庭の残酷な真実』(新潮新書)

 

この本は、世の中一般では裕福とイメージされがちな年収1000万円世帯のうち、特に子育て世帯に焦点を当てて、その経済力の時代による変化と、子育てにかかるコスト、そして公的補助の有無による家計への影響等をふまえて、暮らしぶりを繙いている本です。

 

 

本書は以下の5部構成から成っています。

 

1.住居費 不動産高騰で消えた「マイホームの夢」

2.教育費 少子化でも加熱する「課金ゲーム」

3.生活費 見落とされがちな「共働きにかかるコスト」

4.国民的キャラクターで試算する1000万円世帯

5.お金の育て方

 

この本の冒頭で著者は、「いま子育て中の方にはご家庭の家計管理や子どもの進路等の見通しを立てる際の参考にしていただけたら幸いです」「子育て世帯以外の方、様々な年代の方にも読んでいただき、お互いの状況を知って理解を深め合うための一時になればと思っています。」と述べています。

 

 

本書の前半では、「住居費 不動産高騰で消えた「マイホームの夢」ついて、以下のポイントを説明しています。

 

◆ 5年で1.5倍に急騰、高くなり過ぎて買えないマイホーム

◆ 条件を妥協して買う:①都心や駅から離れる、②築古にする、③広さを妥協する

◆ 不動産高騰の一因は「共働き家庭による実需の増加」

◆「買えないなら賃貸」も厳しい

 

 

この本の中盤では、「教育費 少子化でも加熱する課金ゲームおよび「生活費 見落とされがちな共働きにかかるコスト」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

 

◆ 子育て費用は、すべて公立でも1000万円以上

◆ 少子化なのに親の負担が重い日本

◆ コロナ禍で加熱した小学校受験

◆ 中学受験は塾無しでの合格はほぼ不可能

 

◆ 中高以上にお金の負担が重い大学

◆ 東大生の親の半数以上が年収950万円以上

◆ 病児保育に月10万円も

◆「小1の壁」で共働きを諦める親たち

 

◆ 民間学童の利用料は公設の10倍

◆ 実家に頼れるかどうかは「隠れた格差」

◆ 時間はお金で買えるか

◆ 共働きに迫る「隠れ貧困」のリスク

 

 

本書の後半では、「国民的キャラクターで試算する1000万円世帯」および「お金の育て方」について考察しています。主なポイントは以下の通り。

 

◆ シミュレーションでは、子どもの大学進学時期はほとんどのケースで赤字

◆ 教育資金と老後資金を両立させる難しさ

◆ 長く働く、二人で働くなど収入を増やせば収支は改善する

◆ 子どもの奨学金は、家計にはプラスだが、子どもに借金の負担がのしかかる

 

◆ 家計改善の方法は十人十色

◆ 学資保険、NISA、iDeCoを活用した教育資金、老後資金計画

◆ 収入と所得の違いを理解する

◆ 所得を減らすのも手

 

この本の締めくくりとして著者は、「今の若い世代は結婚や子どもをもつことに否定的だと言われます。」「実際に周囲でも『メリットがない』『コスパが悪すぎる』という声を聴きます。」と述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、これから子育てに向かう若者や子どもたちが選択の余地なく厳しい未来を背負うことに対して、より自覚的になって一瞬でもあたたなまなざしを向けるきっかけとしてみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3276目】