「100年ライフの時代を迎えた現在、長寿化は、社会に一大革命をもたらすと言っても過言ではない。」と提唱している本があります。
本日紹介したいのは、『ワークシフト』(プレジデント社)の著者で、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンほかが書いた、こちらの新刊書籍です。
リンダ・グラットンほか『ライフシフト-100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)
この本の冒頭で著者は、「いま先進国で生まれる子どもは、50%以上の確率で105歳まで生きる」という推計を紹介しています。
過去200年間、平均寿命は10年に2年以上のペース延びてきていて、そのトレンドがすぐに変わることはないと見られています。
したがって、いま20歳の人は100歳以上、40歳の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上ある、ということです。
世界でも指折りの長寿国である日本は、100歳以上の人(英語でセンテナリアンと呼ぶ)は、すでに6万1000人以上いるが、国連の推計によれば、2050年までに、日本の100歳以上人口は100万人を突破する見込みです。
こうした長寿化は、社会に一大革命をもたらし、あらゆることが影響を受ける、と著者は言います。
人々の働き方や教育のあり方も変わるし、結婚の時期や相手、子どもをつくるタイミングも変わります。余暇時間の過ごし方も、社会における女性の地位も変わるでしょう。
長寿化の潮流の先頭を歩む日本は、世界に先駆けて新しい現実を突きつけられている国で、そんな日本の経験をほかの国々も見守っている、と本書では指摘しています。
本書は以下の11部構成から成っています。
1.100年ライフ
2.長い生涯-長寿という贈り物
3.過去の資金計画-教育・仕事・引退モデルの崩壊
4.雇用の未来-機械化・AI後の働き方
5.見えない「資産」-お金に換算できないもの
6.新しいシナリオ-可能性を広げる
7.新しいステージ-選択肢の多様化
8.新しいお金の考え方-必要な資金をどう得るか
9.新しい時間の使い方-自分のリ・クリエーションへ
10.未来の人間関係-私生活はこう変わる
11.変革への課題
本書の前半で著者は、以下の三人の登場人物をモデルとして掲げ、三人の人生と三人のシナリオをシミュレーションした結果を紹介しています。
◆ ジャック 1945年生まれ (寿命70歳)
◆ ジミー 1971年生まれ (現在45歳・寿命85歳)
◆ ジェーン 1998年生まれ (現在18歳・寿命100歳)
シミュレーションの前提条件として、以下の4点を仮定しています。
1.老後の生活資金 最終所得の50%
2.長期の投資利益率 年平均3%
3.所得上昇のペース 年平均4%
4.何歳で引退したいか 65歳
シミュレーションの結果は衝撃的なもので、70歳が寿命のジャックは、勤労期間に毎年所得の4.3%の貯蓄をすれば引退後の資金を賄えたが、85歳まで生きるジミーは毎年所得の17.2%を貯蓄しなくてはならない。
さらに、100歳まで生きるジェーンは、毎年所得の25%の貯蓄が必要で、これは不可能に近い、と言います。この25%は老後の資金のみの話で、それ以外に住宅ローン返済、子どもの学費や医療費など大きな出費に備えた貯蓄が別に必要になるからです。
人が長く生きるようになれば、職業生活に関する考え方も変わらざるを得ない、と本書では指摘しています。つまり、これまでの3ステージ「教育⇒仕事⇒引退」という生き方では、難しくなった、ということです。
先程のシミュレーション結果からも明らかなように、2番目の「仕事」のステージを長くして、引退年齢を70歳~80歳にしていく新たなステージ観を持つ必要があるでしょう。
寿命が大きく延びているため、「仕事」のステージを長くして「引退」のステージを短縮しなければ、経済的にも国家の年金財政においても成り立たなくなってきます。
そうすると大半の人は、思っていたより20年は長く働くということになり、ひとつの働き方を続けることは困難になる、と著者は言います。
私たちは生涯でもっと多くのステージを経験するようになり、働き方の選択肢を増やすことになる、と本書では提唱しています。それは以下のような働き方です。
◆ エクスプローラー(探求者); 選択肢を狭めずに幅広い針路を検討する
◆ インディペンデント・プロデューサー(独立生産者); 自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす
◆ ポートフォリオ・ワーカー; さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる
現在、フリーの経営コンサルタント兼ブロガーとして活動する私の場合は、昨年末から、スモール・ビジネスを起業しながら同時並行でさまざまな仕事をこなす状況のため、2番目のインディペンデント・プロデューサーと3番目のポートフォリオ・ワーカーを組み合わせた形の働き方になっています。
本書では、100年ライフの時代が到来したことに伴い、私たちの人生に大きな変化が起こるため、それに備えた「人生戦略」が必要だと説いています。
本書で指摘する「大きな変化」と、それに対応するための「戦略」として、重要なポイントだと私が感じた点を以下に挙げておきます。
◆ 余暇時間はレクリエーション(娯楽)からリ・クリエーション(再創造)へ
◆ 人生の選択に関しても、「オプション」には価値がある
◆ 寿命が延びるとは、若々しく生きる期間(健康な期間)が延びること
◆ グーグルもキャリコ(カリフォルニア・ライフ・カンパニー)を設立して「健康・幸福・長寿」を研究
◆ 100年ライフにおいては、パートナーとの関係がとりわけ重要
◆ スマートシティー(賢い都市)に住む、大学の近くに人材のクラスター(集積地)ができる
◆ 人工知能(AI)に優るのは「創造性、共感、問題解決」
◆ 「仕事」のステージを変える移行期間に大切なのは「無形の資産」(=人脈・健康・家族との関係)
最後の「無形の資産」について、本書では主として次の3種類の資産から成る、と説明しています。
1.生産性資産; スキルと知識
2.活力資産; 肉体的・精神的な健康と幸福(友人関係・家族関係など)
3.変身資産; 自己認識、多様性に富んだ人的ネットワーク、新しい経験に対する開かれた姿勢
これら「無形の資産」は、これまでの「3ステージ」人生ではそれほど注目されなかったが、マルチステージの時代になると、それぞれのステージへの移行において、極めて重要になってきます。
とくに「変身資産」については、非常に重要だ、ということです。新しいステージへ移行する場合には、「あり得る自己像」をしっかりと描くことが大切になります。
そうした中で、新たな専門性を習得するなど、計画的な準備が必要となりますが、その際に、自己効力感(自分ならできる、という認識)および自己主体感(みずから取り組む、という認識)がある場合のは効果を発揮する、ということです。
次に、18歳~30歳の期間に多い、エクスプローラー(探求者)という生き方について、触れておきます。
選択肢を多く残したまま、さまざまな可能性を探るという過ごし方ですが、世界一周の旅に出る人や、いくつかの違う業種の仕事を短期間で経験するなどの働き方をする人もいます。
また、結婚したり、子どもを作ったりする時期を後ろへ延ばす若者も増えていますが、100年ライフの時代に、それはむしろ普通の感覚だ、と本書では述べています。
彼らは働く期間も、これまでの世代の人々と比べて格段に長くなるので、準備期間もそれ相応に長くなって当然だ、ということです。
本書の最後では、「長い人生では学習や教育がいっそう重要になり、それに多くの時間を費やす人が増える」と指摘しています。
大学の学部教育で経験学習の要素が増やされて大学教育の年数が長くなり、大学院に進む人や職業訓練を受ける人も多くなります。
また、学習方法のイノベーションも進み、人生の早い段階だけでなく、もっとあとの段階でも、教育への真剣な投資がなされるようになるでしょう。
雇用環境の変化に対応したり、頭脳を刺激し、リフレッシュしたりするために、新しい専門知識を学ぶ必要性が理解され始める、と本書では予測しています。
あなたも本書を読んで、「100年時代の人生戦略」を真剣に考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を