「『8050問題』とは、80代の親が収入のない50代の子どもの生活を支え、行き詰ってしまっている世帯のことをさす。その背景には、長期高齢化している引きこもり状態にある人たちとその家族の孤立がある。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1962年神奈川県生まれ、大学卒業後、通信社勤務を経てフリーのジャーナリストになり、ひきこもり問題、東日本大震災、築地市場移転などのテーマを追っている池上正樹さんが書いた、こちらの書籍です。
池上正樹『ルポ「8050問題」高齢親子 ”ひきこもり死” の現場から』(河出新書)
この本は、世間の「中高年ひきこもり」像への一面的な見方に対する偏見や誤解を解いて、今も孤立する本人や家族たちの利益になることが本来の目的となるよう、机上ではなく現実に即した「ひきこもり支援」の枠組みを再構築してもらうために書かれた書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.「8050問題」の背景
2.歪められた「8050問題」
3.親が死んだら、どうするのか
4.子どもを隠す親たち
5.支援は家族を救えるのか
6.生きているだけでいい居場所をつくる
この本の冒頭で著者は、「8050問題」の背景にあるのは、「迷惑をかけてはいけない」から「働かない子を隠さなければいけない」という、親世代を中心にした岩盤のような ”恥の文化” だ、と述べています。
本書の前半では、「8050問題の背景」および「歪められた8050問題」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 本人は診断を受けたがらず、親も子どもを隠す「ひきこもり」
◆「ひきこもり状態」の40~64歳は推計61万人
◆「7040問題」や「9060問題」も
◆ ひきこもるきっかけは「退職」がトップ(職場の人間関係など)
◆ ひきこもりは「社会構造の歪み」が原因
◆ 40歳以上は対応してもらえない「ひきこもり」
◆「8050問題」は勝部麗子さん(大阪府豊中市社会福祉協議会のコミュニティー・ソーシャルワーカーCSW)が名づけ親で、「8020運動」をヒントに
◆ メディアに捏造された「ひきこもり=犯罪予備軍」のイメージ
◆「不寛容な社会」が外出の機会を遠ざける
この本の中盤では、「親が死んだら、どうするのか」および「子どもを隠す親たち」について考察しています。主なポイントは次の通り。
◆ 親の死体遺棄事件が続発
◆ 障害年金申請手続きの壁
◆「充電期間」が30年間続く「ひきこもり」
◆ 親子関係は良好でも拭えない「経済的不安」
◆ 公的支援につながらず、世帯ごと孤立
◆「隠される存在」であることが重荷に
◆ 社会構造による「社会的監禁」
◆「生きること最優先」の社会に
本書の後半では、「支援は家族を救えるのか」および「生きているだけでいい居場所をつくる」について、著者の見解を紹介・解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 無理やり引き出す「暴力的支援」
◆ 就労しても生きづらさは変わらない
◆ ひきこもりに共通の心性:真面目で心優しい、相手の気持ちが分かり過ぎてしまう
◆「つながりの貧困」が命の危機に
◆「助けて」の心理になれるカギは地域
◆ 働きたいけど働けずにいる人に、「支援付就労」の仕組みを
◆「コミューター期間」が企業に好評
◆ キーワードは「地域を巻き込む」
◆ 障害や特性にこだわらない居場所づくり
◆「勤労の義務」がひきこもりを生み出す
この本の締めくくりとして著者は、「8050問題」は、地方都市のほうが小さなコミュニティで顔の見える関係だけに顕在化しやすく、支援する側も連携し、深刻な問題として向き合ってきていた、と述べています。
あなたも本書を読んで、高齢親子のひきこもり死の現場からのルポを理解し、「8050問題」の現状と本質を考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2906日目】