「人生が上り坂でイケイケのとき、物事がうまく運んでいるときは孔子の教えに従って、厳しめに自らを律していくとよい。」「人生が下り坂でいまいち元気がない。そんなふうに行き詰っているときは、老子特有の『ゆるさ』や『自由気ままさ』に寄り添ってみてはどうか。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1949年生まれ、慶應義塾大学医学部を卒業後、テキサス大学医学部、メイヨー医科大学に留学、帰国後、立川病院神経科部長、防衛医科大学教授、防衛医科大学校病院長などを歴任し、六番町メンタルクリニック院長、精神科医、医学博士の野村総一郎さんが書いた、こちらの書籍です。
野村総一郎『人生に、上下も勝ち負けもありません。焦りや不安がどうでもよくなる「老子の言葉」』(日経ビジネス人文庫)
この本は、「35の老子の言葉」を取り上げ「ジャッジフリー」の考え方を、精神科医の著者が「意訳」ならぬ「医訳」をして、緩やかに解釈して紹介・解説している書です。
本書は以下の4部構成から成っています。
1.つい、人と比較してしまうときの処方箋
2.つい、がんばりすぎてしまうときの処方箋
3.自分がイヤになったときの処方箋
4.なんだか思い通りにいかないときの処方箋
この本の冒頭で著者は、悩める人が陥りやすい「4つの心的傾向」を、次の通り紹介・説明しています。
① 自分は弱い=劣等意識
② 自分は損をしている=被害者意識
③ 自分は完璧であるべきだがむずかしい=完璧主義
④ 自分のペースにこだわる=執着主義
それぞれに対して、老子は以下のような思想を提示しています。
①「強い者が勝つ、弱い者が負けるというのは思い込み」
②「多くを望まなくていい」
③「所詮、価値は相対的なもの。絶対的な価値など存在しない」
④「自然のまま、流れに任せて生きるのがいい」
つまり、老子哲学は「弱さを承認する思想」なので、今という、いささか窮屈な時代を生きるには老荘思想のような、ちょっと肩の力を抜いて「抜け道をひょうひょうと進んでいく」ような心持ちがむしろ武器になる、ということです。
本書の前半では、「つい、人と比較してしまうときの処方箋」について以下のポイントを説明しています。
◆ 他人に向いた視線を自分自身に向ける
◆ ジャッジしないで誰からも学ぶ
◆ 何もないということで実は役立っていることがある
◆「知っていること」でも「知らない」と言うくらいで、じつはちょうどいい
この本の中盤では、「つい、がんばりすぎてしまうときの処方箋」および「自分がイヤになったときの処方箋」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 結果だけではなく、「努力を続けている」だけで価値がある
◆ 本当に大事なことは自然が教えてくれる、暴風も大雨もずっと続くことはない
◆ 無理をせず、自分のペースで生きていく。どうせ時代は移り変わっていくのだから
◆ 勝ち続けることだけが人生ではない、空っぽになった器に新しい何かを入れればいい
◆ すべての価値は相対的なもの、余計なことはせず、自然に振る舞う
◆ 怒りをぶちまけても何もいいことはない、自分の平穏のために心を大きくする
◆ 知識や学が、そのまま自分の価値につながるわけではない
◆ 柔らかく弱いことは、生きているということ。むしろ弱いほうが、しぶとく生きられる
本書の後半では、「なんだか思い通りにいかないときの処方箋」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 水のように柔弱であることが、最強なのだ
◆ 恨みを恨みで返していたら、新たなストレスが増える
◆「成功と失敗」「栄光と挫折」の両方を知っている人は、おもしろくて強い
◆ 大事なのは「今いる場所で」で「幸せのタネ」を見つけること
この本の巻末には、「焦りや不安がどうでもよくなる23のフレーズ」が掲載されていて、読んでみると元気と勇気をもらえます。
本書の締めくくりとして著者は、「まずは塩むすびから始めてみましょう。おいしいという感情は無条件で幸せな気分になれます。食べることから始めてみるのはきっかけとして最適です。」と述べています。
あなたもこの本を読んで、焦りや不安がどうでもよくなる「老子の言葉」を学び、「ジャッジフリー」思考を自分の中に置いてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3563日目】