『選ばない消費 AI時代の暮らしと価値観』
「選ぶ自由が増えたのに、私たちは選ぶことに疲れている。」― 情報も商品もサービスも無限に近いほど増えた現代社会では、何を選ぶかを自分で決めること自体が負担になりつつあります。本書は、音楽配信、サブスク、レコメンド、生成AIなどに判断を委ねる行動を「選ばない消費」と名付け、その背景と可能性をデータから読み解いた一冊です。
本日紹介するのは、埼玉県生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了後、NTTドコモを経てニッセイ基礎研究所生活研究部門に入社。2021年より同研究所上席研究員として、消費者行動を専門に調査・研究を続け、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」やNHKラジオ「マイあさ!」などにも出演。総務省、内閣府などの委員も務める久我尚子(くが・なおこ)さんが書いた、こちらの書籍です。
久我尚子『選ばない消費 AI時代の暮らしと価値観』(集英社新書)
本書は、商品や情報が豊富になりすぎた結果、「自分で選ぶこと」そのものに疲れ、他者やサービス、アルゴリズム、生成AIに選択を委ねる人が増えている現象を「選ばない消費」と捉え、その背景にある社会変化や価値観を分析しています。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.選ばない消費とは何か
2.私たちが選ばなくなるまで
3.選ばない消費の良いところ
4.選ばない消費の意識調査
5.選ばない消費は賢い消費なのか
6.選ばない消費の今後
本書の前半では、「選ばない消費」がなぜ広がっているのか、その背景となる社会や消費行動の変化が紹介されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 商品やサービス、情報の選択肢が増えすぎたことで、比較・検討そのものが大きな負担になっている
◆ 「選択肢が多いほど自由で幸せ」という従来の常識が、必ずしも成り立たなくなっている
◆ 音楽のストリーミングや動画配信では、アルゴリズムによるレコメンドが日常的な選択を代替するようになった
◆ ファッションや食品などでもサブスクリプションサービスが広がり、「自分で一つひとつ選ばない」という消費スタイルが定着し始めている
◆ 生成AIの登場によって、商品選びだけでなく、旅行、仕事、学習など幅広い領域で「最適解をAIに聞く」という行動が広がっている
この本の中盤では、「選ばない消費」が私たちにもたらすメリットや、実際の意識調査から見える生活者の姿が解説されています。主なポイントは次の通り。
◆ 選択にかかる時間や心理的負担を減らし、本当に大切なことへ時間やエネルギーを振り向けられる
◆ 専門家やサービス、AIに任せることで、自分だけでは見つけられなかった商品や情報との出会いが生まれる
◆ すべてを自分で調べて比較するより、一定の部分を委ねることが「タイパ」の向上につながる
◆「選ばない」という行動は若者だけに限らず、情報過多に直面する幅広い世代へ広がっている
◆ 選択を任せる対象や範囲は人によって異なり、「何を自分で決め、何を任せるか」という新しい価値観が生まれている
本書の後半では、「選ばない消費」は本当に賢い選択なのかという問題と、AI時代の消費の未来について考察されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 選択を他者やアルゴリズムへ委ねすぎると、自分自身の好みや判断力が弱くなる可能性がある
◆ レコメンドによって似た情報ばかりが提示されれば、偶然の発見や新しい価値観との出会いが減る恐れがある
◆ AIの「最適解」は必ずしも本人にとっての幸福な選択とは限らず、最終的な判断主体は人間である必要がある
◆ 企業側には、単に選択肢を増やすだけではなく、「選びやすくする」「任せても安心だと思える」サービス設計が求められる
◆ AI時代には、「すべて自分で選ぶ」か「全部AIに任せる」かではなく、選択を上手に分担する力が重要になる
本書で最も興味深いのは、「選ばない」という行為を、消極的な行動ではなく、一つの合理的な選択として捉えている点です。
すべての買い物、情報収集、旅行計画、日程調整に自分の時間を使っていたら、本当にやりたいことに使える時間が減ってしまいます。だからこそ、重要度の低い選択はAIやサービスに任せ、自分にとって重要な意思決定に時間を使うことは合理的です。
私自身も、生成AIをさまざまな情報収集や企画、執筆の補助に活用していますが、AIを使うことで最も価値を感じるのは「考えなくていいことを減らせる」点です。
一方で、最終的に何を大切にするのか、どんな人生を送りたいのかという判断は、自分自身で行う必要があります。人生100年時代のライフスタイルを考えるうえでも、「時間配分」は極めて重要です。
選択の負担を減らして生まれた時間を、家族、友人、仕事、学び、趣味、旅行など、自分が本当に大切にしたいことへ振り向ける。
そう考えれば、「選ばない消費」は単なる消費行動の変化ではなく、人生の時間を取り戻すための新しい生き方とも言えるでしょう。
マーケティングや消費者行動に関心のある方、生成AIによって生活がどう変わるのか知りたい方、情報過多や選択疲れを感じている方、そして限られた時間をより豊かに使いたいすべての方に、ぜひ読んでほしい一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【4179日目】








