「80歳を超えると老いが進み、同じ高齢者でも75歳ぐらいまでの元気なときとは異なる『長寿期』に移行し、これまで考えもしなかったことを考え始める。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1943年熊本県生まれ、九州大学教育学部卒業、同大学大学院教育学研究科博士課程中途退学、京都精華大学教授、安田女子大学教授などを経て、2012年まで松山大学人文学部社会科学科教授を務めた春日キスヨさんが書いた、こちらの書籍です。
春日キスヨ『長寿期リスク「元気高齢者」の未来』(光文社新書)
この本は、一般には「高齢者の介護問題」の文脈で語られることが多い問題を、「高齢者の生活問題」の文脈から取り上げ、それがどのような現状にあるかについて述べている書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.進む「超長寿化」と団塊世代の未来
2.長寿期在宅「ひとり暮らし」「夫婦二人暮らし」の危機
3.増える長寿期夫婦二人暮らし
4.長寿期夫婦二人暮らしの行きつく先
5.「夫婦で百まで」を可能にする条件
6.超高齢在宅暮らしに必要な「受援力」
7.まとめに代えて
この本の冒頭で著者は、「自力で生活できなくなったときには『キーパーソン』が必須の時代になっていて、キーパーソンしだいで最晩年の人生の質は大きく変わってくる。」と述べています。
本書の前半では、「進む超長寿化と団塊世代の未来」および「長寿期在宅ひとり暮らし、夫婦二人暮らしの危機」について以下のポイントを説明しています。
◆ 70代と80代は違う、急激な「老い」へのスパイラルが起こる
◆ 80歳以上の長寿期人口が1600万人の社会へ
◆「子どもに迷惑をかけてはいめない」という親の意識
◆ 柔軟性とつながる力を失うのが長寿期
◆ 長寿期高齢者の夫婦ふたり暮らしは、老老介護ではなく「生活そのもの」
この本の中盤では、「増える長寿期夫婦二人暮らし」および「長寿期夫婦二人暮らしの行きつく先」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 80代半ばを過ぎると「老い」が大きく進む
◆ 80代半ばの男性は約8割が「妻が存命」
◆ 団塊世代が85歳に達する10年後は、超高齢世帯は305万世帯から560万世帯に増加
◆ 長寿期女性(85歳以上)の家事能力の陰り、とくに「食事づくり」の困難
◆ 長寿期の認知能力低下(80代後半で大幅に低下)
◆ 親の危機に気づかない離れて暮らす子どもたち
◆「調理定年」の勧め(80歳前後で調理がおっくうになる)
◆ 家事役割を降りられない妻たち
◆「限界点」「どん詰まり」まで行った夫婦のリスク
本書の後半では、「夫婦で百までを可能にする条件」「超高齢在宅暮らしに必要な受援力」および「まとめに代えて」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 夫婦ふたり暮らしで、サービス利用や支援を拒否する夫の問題
◆「人の世話になりたくない」「家事は妻がすればいい」という意識のまま
◆「ばあさんがつくったものがうまい」という殺し文句
◆ 準備も覚悟もなく、拒否権だけを発動し続ける親
◆「成り行きまかせ」から不本意な選択に
◆ ひとり暮らし女性は、キーパーソン問題への切迫感を持つ
◆ 夫婦ふたり暮らしでは、夫の消極性・無関心が問題を先送りする
◆ 世間には見えていない「80代以上の高齢夫婦の問題」
◆ 団塊世代を含めた多くの超高齢者がふたり暮らしをする時代に
◆ 介護保険制度開始から四半世紀で見えてきた「生活支援」の問題
◆ 介護は予防できるものではない
◆「介護予防」より「生活支援」を
◆ 介護人生を受けても、介護サービスを受けていない人が4分の1
この本の締めくくりとして著者は、「元気な間は、90歳過ぎまで、ひょっとしたら100歳まで生きるかもしれないと考えても、長寿期に向けどう備えるかなどを具体的に考えることができない。」と述べています。
あなたも本書を読んで、夫婦ふたり暮らしに潜む「長寿期リスク」、すなわち「元気高齢者」の未来について考え、しっかりと対策を練っていきませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3542日目】