「日本の安全保障にとって日米同盟は死活的に重要。しかし、アメリカに依存するだけでは日本の安全は守れない。」― 中国の海洋進出、台湾有事、尖閣諸島をめぐる緊張、核による威嚇など、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、外交と軍事の両面から、日本が主体的に国益を守るための戦略を提言する本があります。

本日紹介するのは、1954年北海道生まれ、防衛大学校機械工学科卒業後、海上自衛隊に入隊し、護衛艦隊司令官、自衛艦隊司令官、海上幕僚長などを歴任、2014年に第5代統合幕僚長に就任し、2019年に退官した元統合幕僚長の河野克俊(かわの・かつとし)さんと、1961年東京都生まれ、東京大学法学部卒業後、1984年に外務省に入省し、国際情報統括官、経済局長、駐オーストラリア日本大使などを歴任、現在は同志社大学特別客員教授、笹川平和財団上席フェローなどを務める元外交官の山上信吾(やまがみ・しんご)さんが共著した、こちらの書籍です。

河野克俊・山上信吾『アメリカを巻き込み、中国の恫喝に勝つ戦略』(ビジネス社)

日本の安全保障を考えるうえで、日米同盟が重要であることは言うまでもありません。

しかし、著者たちは、単に「日米同盟が重要だ」と繰り返すだけでは、日本の安全を守ることはできないと指摘しています。

中国は海洋進出を強め、台湾周辺や東シナ海、南シナ海で軍事的な存在感を高めています。
一方、アメリカではトランプ政権の外交・安全保障政策をめぐり、同盟国に対する関与のあり方が問われています。

こうした状況で、日本はアメリカに依存するだけでなく、自らの防衛力と外交力を高め、アメリカを日本の安全保障戦略に積極的に巻き込む必要がある、というのが本書の基本的な主張です。

著者の二人は、軍事と外交の実務の最前線で長年にわたりアメリカと向き合ってきました。
その経験を踏まえ、日米同盟の重要性だけでなく、その限界や課題についても率直に論じています。

本書の特徴は、「媚中・拝米」という受け身の外交姿勢から脱却し、日本が主体的に安全保障戦略を構築することを重視している点です。

本書は以下の10部構成から成っています。

1.中国はなぜ海へ出ようとするのか

2.台湾が落ちれば、日本は包囲される

3.尖閣はなぜ中国の標的になるのか

4.トランプのアメリカは本当に孤立主義なのか

5.日本はアメリカをどう巻き込むか

6.豪州は対中包囲の要になれるか

7.米豪同盟、日豪準同盟、AUKUS・・・さまざまな「同盟」

8.中国の核恫喝にどう対抗するか

9.集団的自衛権をフルスペックで使える日本へ

10.高市政権に求められる「東半球戦略」

 

本書の前半では、中国の海洋進出と台湾有事が日本の安全保障に与える影響について、以下のポイントを説明しています。

◆ 中国の海洋進出には、軍事戦略と地政学的な背景がある

◆ 台湾有事は、日本の安全保障に直結する重大な問題である

◆ 台湾が中国の支配下に入れば、第一列島線の防衛環境が大きく変わる

◆ 尖閣諸島をめぐる問題では、日米同盟の実効性が問われる

◆ トランプ政権の外交姿勢を見極め、日本が主体的に対応する必要がある

 

この本の中盤では、日米同盟の強化とオーストラリアとの安全保障協力について解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 日本はアメリカに依存するだけでなく、同盟を主体的に活用する戦略を持つ

◆ 台湾問題を米中二国間だけの問題とせず、日本自身の安全保障課題として捉える

◆ オーストラリアは、インド太平洋地域における重要な安全保障パートナーである

◆ 日豪協力やAUKUSなど、多層的な安全保障ネットワークを強化する

◆ 日本が持つ海中戦力などの強みを生かし、地域の抑止力向上に貢献する

 

本書の後半では、中国の核による威嚇への対応と、日本が目指すべき安全保障戦略について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 台湾有事では、中国による核を使った威嚇の可能性も想定する

◆ 核抑止の実効性を高めるため、日米間の戦略的な協議を深める

◆ 集団的自衛権のあり方を見直し、同盟の実効性を強化する

◆ 軍事力だけでなく、外交力と経済力を組み合わせた国家戦略を構築する

◆ 高市政権には、インド太平洋を視野に入れた「東半球戦略」が求められる

 

本書を読んで最も印象に残ったのは、「日米同盟を重視すること」と「アメリカに依存すること」は同じではないという点です。

日本の安全保障にとって、アメリカとの協力は不可欠です。しかし、同盟を有効に機能させるためには、日本自身が何を守り、どのような役割を果たすのかを明確にする必要があります。

また、中国の軍事的な動向を冷静に分析すると同時に、偶発的な衝突を防ぐ外交や危機管理の仕組みを維持することも重要でしょう。

著者たちが提唱する集団的自衛権の拡大や対中抑止の強化には、憲法上の制約、国民的合意、地域の緊張への影響など、検討すべき課題もあります。

それでも、外交と軍事の両方を理解し、日本が主体的に国家戦略を考える必要性を訴えている点は、本書の大きな特徴です。

安全保障とは、戦争に備えるだけでなく、戦争を起こさせないための戦略でもある。
国際情勢が大きく変化する時代に、日本の外交・安全保障のあり方を考えるうえで、参考になる一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4241日目】