書評ブログ

オバタカズユキ 『大学図鑑!2015』 (ダイヤモンド社)

オバタカズユキ氏は、フリーライターおよびコラムニストで、若者の生活や働き方に関する取材、著書が多い。

 

本書シリーズの『大学図鑑』は、1999年に初めて刊行されて以来、好評を博して毎年改訂版が出版され、2015年版で16冊目となる。取材チームが各大学のキャンパスに足を運んで聞く、学生の 「生の声」 を一貫して重視してきた。

 

時に、公の出版物としては表現がいかがなものか、という批判も数多く寄せられたようだ。それでも本書の編集方針は、あくまでも 「生の声」 重視、読者が知りたい 「本音」 重視を貫いてきた。

 

我が国は少子高齢化の進展により、大学は今や全入時代に突入し、各大学は定員割れが続出する生き残り競争に入っている。そうした中で、本書は入学試験の偏差値による大学序列化も回避していない。

 

本書で採り上げる大学は全国の有名79大学だが、大半は関東の私立大学だ。それ以外だと、国公立大学を東日本・西日本に分けて計23大学、関西私大が計8大学のみ。また、関東女子大は別グループとして計10大学を紹介している。

 

残りは、すべて関東私大で、以下のAからEまでの5グループに分類・序列化している。

 

1.Aグループ : 早・慶・上智・ICU・東京理科
2.Bグループ : MARCH(明治・青山・立教・中央・法政) + 学習院
3.Cグループ : 成蹊・成城・明治学院・獨協・國學院・武蔵・芝浦工業・東京農業・北里
4.Dグループ : 日東駒専(日本・東洋・駒澤・専修)+ 神奈川・玉川・文教
5.Eグループ : 大東亜帝国(大東文化・東海・亜細亜・帝京・国士舘)+ 拓殖・東京経済・和光・立正・関東学院・桜美林

 

本書の特徴は、以上の関東私大に関する鳥瞰図だ。A~Eのグループごとに、縦軸に偏差値(入試難易度=学力)、横軸に「自由」 気まま or がっちり 「勉強」 という校風を定めて、大学ごとの特徴を相対的に表している。

 

各大学の評価については賛否両論と言うか、百家争鳴あるだろうが、分かりやすいことは間違いない。また、あくまでも私見だが、本書の鳥瞰図や大学ごとのキャッチフレーズは 「当たっている」 と感じるものだ。学生の 「生の声」 からの記載だからだろう。

 

いくつか代表的な大学のキャッチフレーズ例を以下に紹介したい。

 

1.早稲田大学 : アカ抜けなさが売り!多彩なキャラが行き交う大学
2.慶応義塾大学 : SFCでは新カリキュラム開始!社交的かつ合理的な私大の華的大学
3.上智大学 : 2014年に総合グローバル学部を新設!女子パワーが目立つカトリック大学
4.明治大学 : バンカラ色はなくなったが、元気のよさはまだまだ健在
5.立教大学 : 適度なスマートさを醸し出しながら生きていく内弁慶的な大学

 

各大学の紹介では、以下のような項目から成っていて、学部ごとの特徴もよく分かる。

 

1.歴史と基本的な立場
2.学生の気質
3.世間の評判
4.環境問題
5.各キャンパス案内
6.学問&学部問題
7.学生の生活と性格
8.ホンネの就職状況

 

実に、受験生や親が大学について知りたいホンネの情報が記されている。本書が16年も続いてシリーズ化されているのは、受験生や父母の支持を受けているからだろう。

 

私は、大学新卒の幹部候補採用や研修を仕事としているため本書に目を通しているが、受験生、父母、官公庁や企業の人事・採用担当者には有益な書だろう。但し、情報はセレクトしながら批判的に読む姿勢も忘れないで欲しい。