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週刊東洋経済編集部『新・流通モンスター・アマゾン』(東洋経済新報社)

アマゾンは、世界最大規模の地球書店から、さらに進化して、今や流通モンスターになりつつある。本書は、アマゾンの真の姿を浮き彫りにする特集の e- book だ。

 

アマゾンは本のインターネット販売からスタートし、徹底的な顧客第一主義を貫き、利益の全てに留まらず、それ以上の資金を顧客のための投資にあてている。

 

アマゾンの売上は急激に伸びているが、いまだに赤字決算を続けている。投資の大半は、物流関連、システム開発関連、商品拡大に伴う投資だ。とくに物流拠点については世界で69ヶ所、うち日本国内でも12ヶ所と群を抜いている。

 

自社の物流倉庫を持ち、自動化されたピッキング設備とIT技術を駆使した在庫管理システムは大きな競争力になっている。とくに、購入金額の多寡に関わらず、全商品の配送料を無料化したことが、ネット通販業界に衝撃を与えた。

 

楽天やゾゾタウンといった日本のネット販売・勝ち組会社の事業戦略も大きく変更を迫られることになる。ゾゾタウンは配送料がかかったことに対する女子高生のクレーム処理を経営者が誤り、多くの顧客の信頼を失った。

 

楽天は、出店の売上歩合手数料を配送料込みで計算する方式に変更して、有力店舗の信頼を損なった。いずれもアマゾン対抗を焦った経営判断のブレだ。

 

アマゾンには原動力となる、以下の三つの考え方がある。

 

1.つねに顧客中心に考えること
2.発明を続けること
3.長期的な視野で考えること

 

発明には長い時間がかかり、我慢強いことが大切だ。この経営哲学は10年後も変わらない、とアマゾンCEOのジェフ・ベゾスはインタビューで述べている。

 

本書のハイライトは創業者兼CEOのジェフ・ベゾスへのインタビュー記事だが、「尊敬する経営者はいますか?」と聞かれて、ウォルト・ディズニーと答えている。もう一人挙げたのがソニーの盛田昭夫氏だ。

 

ベゾスは、より大きな使命感を持った経営者が好きなのだ。今後、アマゾンは家電量販店や他のIT企業のビジネスモデルを破壊してしまうかも知れない。

 

また、世界一の流通小売業ウォルマートとも全面対決のステージに入ってきた。あくまでも顧客第一に徹するアマゾンは、極限まで価格競争を仕掛けてくるだろう。

 

今後の変化する、世界の流通業界およびIT業界を展望する上で本書の読破は欠かせない。すべての経営者、ビジネスパーソンにぜひ読んでもらいたい本だ。