書評ブログ

岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)

岡田斗司夫氏は、1年間で50キロの減量に成功した経験を持ち、その驚異のダイエット法を具体的に紹介したのが本書だ。出版当初は大きな反響を呼んだが、その内容は今も立派に通じる王道の理論だ。

 

本書によれば、ダイエットは楽しく知的な行為であり、ローリスク・ハイリターンの最高の投資だという。著者の方法はただ一つ、メモ帳一冊を用意して、毎日の体重の変化をきめ細かく記録し続けるだけ、というシンプルな方法だ。

 

人間の脳は、記録された数値を見ると、自然に願望や意思が働いて、望むような行動を自然に取るようになっていく。潜在意識に働きかけることによって、自然に楽しんでダイエットに向かっていく、ということだ。

 

確かに、記録した数値がどんどんいい方向に変化していくと、がぜんやる気が湧いてくる。行動に拍車がかかり、それがさらに数値を改善して、ますますやる気が増していく、という好循環のサイクルが回っていくのだ。

 

記録しないから、人間はどんなに大切だと思ったことでもすぐ忘れてしまって、行動が続かない。続かなければ習慣にならないので、挫折してしまうということを繰り返すのだ。

 

岡田氏の行った方法ならば、記録し続けるという行為自体が、つねに数値を意識するということに繋がり、結果が目に見えれば、必ず脳が意識して行動が習慣化する。

 

途中からは、まるで中毒になったみたいに四六時中、ダイエットのことを考えることになって、結果が出れば楽しくて仕方がなくなる、という究極の手法なのだ。

 

これは、人間の脳の仕組みを巧みに活用したやり方で、様々な行動に応用できる。英語の学習時間を記録し続けることを提唱する英語講師もいるし、マラソンの訓練などにも練習記録は重要だ。

 

本書は、タイトルは軽いが、実は多くの分野に応用が可能な深い内容だ。行動が習慣化せずに悩んでいるビジネスパーソンや学生、主婦など、全ての方々に本書の一読を薦めたい。