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大前研一『「一生食べていく力」がつく大前家の子育て』(PHP文庫)

大前研一氏と言えば、世界トップの経営コンサルティング会社である米国マッキンゼーの日本支社長を務めた経営指導のプロ中のプロだ。経営者を教え導く、抜群のセンスと実力を持ってしても、自らの子育ては難しいようだ。

 

本書には、大前家の子育て原則や、実践記録が記されているが、私から見たら、親がこれだけの実績を挙げて、日本人では断然トップの講演料を取れる論客なのに、子育ては試行錯誤に見える。

 

偉大な親ほど子育てには苦労しているのが通常だが、大前家もその例に漏れないのだろう。起業して、既定のレールに乗った人生を歩まないのはいいが、やっぱりそう簡単にうまくは行かない。

 

本書によれば、親のコネや口利きで何とか仕事をもらって食いつないでいるように読める。経営指導のプロにして、自分の子どもはなかなか思ったように指導できない、ということだ。

 

本書には、一生食べていく力をどうつけるか、が述べられている。自ら道を切り開いていく、ということになるのだが、起業は一筋縄ではいかない。商売のセンスも大きな要素だし、運やタイミングも大きなポイントになってくる。

 

世の中で、大前氏よりも経営指導に優れた人材は日本には殆どいないと思うが、子育てが大前氏より上手く、成果を挙げている人材は山ほどいる。自ら仕事をする能力と子供を育て、成功に導く能力とは異なる、異次元の力だと実感する。

 

本書は、子育てや人材育成に悩む人々には多くのヒントや気付きを与えてくれる。一読を心から薦めたい。