書評ブログ

園善博『本がどんどん読める本』(講談社+アルファ文庫)

園善博氏は、「速読セミナー」を主宰するカリスマ講師だ。受講者は13,000人を超え、多読の方法から資格取得などに役立つ効率的な勉強法まで、多くの受講者が結果を出している。

 

本書は、多読をしながら、且つ、記憶が脳に定着する方法、それを著者は「速習法」と名付けて紹介している。脳科学に基づく、理にかなった方法なので、セミナー受講者からフリーで活躍する人がどんどん生まれている。

 

本書の構成は以下の5部から成っている。

 

1.「読書」 は仕事と人生に成功をもたらすマスターキーだ
2.「記憶のメカニズム」 を作動させるシンプルな勉強ノウハウがあった!
3.「プリペアードマインド」 をセットすると、脳が 「加速」 する
4.本を速く、たくさん読める3つの読書法をマスターする
5.本を探し、選び、身につける新しい習慣をはじめる

 

本書の中で、とくに感銘を受けたのは上記の3と4にある、多読の具体的な方法だ。次の2つがキーポイントになる。

 

1.プリペアードマインド
2.プライミング効果

 

どちらも聞いたことがない人が多いだろう。ただ、これは私が実際に読書をする際のやり方に驚くほど似ていて、自分では長年の試行錯誤の結果、この方法に辿りついていた。

 

プリペアードマインド(Prepared Mind)とは、「準備する心」であり、本を読む前に行っておくべき以下の作業のことだ。

 

1.目的
2.条件 (環境・能力)
3.欲求
4.イメージ

 

まずは本を読む目的を明確にしておくこと、この本から何を学びたいのか、得たいのかということだ。次に、本を読む条件を整えておくこと。読書をする環境をそろえ、自分の能力に合った本を選ぶことだ。3つめに、本を読破したらどんな良いことがあるかを考えるごほうびを考えてもいいし、読破した時の効用をはっきりさせる。最後に、読んだ後の自分がどうなるかをイメージすることだ。

 

このプリペアードマインドのセットがあるかないかで、読書の質もスピードも大きく変わってしまう、というのが本書の主張だ。脳科学の理論に合った方法だ。

 

もうひつつのキーポイントであるプライミング効果 (Priming Effect)とは、「先行する刺激が、後続する刺激に影響を及ぼすこと」と定義される。分かりやすい例は、「ピザと10回、言ってみて」というゲーム。「ピザ、ピザ、ピザ、・・・・」と言わせた後で、「(ひじを指して)ではここは?」と問う。殆どの人は「ひざ」と答えてしまう。

 

本当の答えは「ひじ」だが、「ピザ」と何回も繰り返しているので、思わず 「ひざ」 という言葉が出てしまう、という効果だ。本を読むときにこれを応用すると、それは「なじみ感」を出すことだ、という。

 

著者が勧めるのは、本の「パラパラ読み」だ。パラパラめくりながら本を眺める、キーワードだけを追っていく、あるいは目次まえがきあとがきを読んで、本の構成や全体像を頭に入れておく、という作業だ。

 

この「プリペアードマインド」「プライミング効果」を活用することで、多くの本を、記憶に定着させながら読んでいくことが可能になる。そして、読んだ本の数が増えて慣れてくると、速度も上がり、結果的に速読が可能になる。

 

その書籍数の分岐点は1,000冊だ、と園氏は別の著書で述べている。1,000冊を超えて本を読む「多読」が習慣になると、怖いものはなくなるということだ。

 

著者は、こうした方法で年間500冊の本を読破している、という。私は300冊だが、結果的に著者とほぼ同じやり方で多読をしていることが、本書を読んでよくわかった。

 

本を読むことにより人生は間違いなく、豊かに充実したものになっていくと私は確信している。全ての方々に心から本書を推薦したい。