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古市憲寿『働き方は「自分」で決める』(講談社文庫)

古市憲寿氏は、1985年東京生まれで、東京大学大学院総合文化研究科博士課程に在籍中。慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)でもあり、専攻は社会学だ。

 

大学院での研究のかたわら、マーケティングIT戦略立案などの活動も行い、複数の著書による現代社会や若者の考え方を代弁した主張は広く注目を集めている。

 

本書は、古市氏のが友関係を持つ若手起業家の生き方や働き方をストーリー風に記して、その実態をリアルに紹介し、そこから現代の若者の働き方について、一般論を展開している。

 

もともと本書は、『僕たちの前途』というタイトルで2012年11月に講談社から出版された単行本を改稿、改題した文庫本だ。巻末に追加された対談が素晴らしいので、ぜひ文庫版の本書をお薦めする。

 

文庫版の本書が単行本と異なる点としてもうひとつある。単行本に多くあった脚注を、文庫本では思い切って本文に取り込み、不要な注は思い切ってカットしている点だ。

 

本書の構成は以下の通りだが、前半が3名の若手起業家をストーリーで紹介し、後半で「起業」という働き方が現代の若者の感性や考え方にマッチしていることを述べ、その特徴を整理している。

 

本書巻末には、シェアハウスに同居して音楽活動を行うことで世界にメッセージを発信し続ける人気グループバンドのSEKAI NO OWARIとの対談が収録されている。

 

1.僕たちのゼント (起業家:松島隆太郎)
2.東京ガールズコレクションの正体 (TGCプロデューサー:村上範義)
3.俳優はなぜ映画を撮ったのか (俳優&映画監督:小橋賢児)
4.つながる起業家たち
5.あきらめきれない若者たち
6.僕たちの前途
7.SEKAI NO OWARI ・「ロックバンド」の終わり

 

古市氏によれば、若手起業家のイメージは、失敗してニートとして引き籠るか、ホリエモンのように六本木ヒルズに住む極端な成功者となるか、という二極化したものしかない、という。

 

実際には、起業しても会社を大きくして上場したり、巨額の収入を得たりするよりも、好きな仕事を好きな仲間とだけ行う働き方を選ぶ若者が増えている。

 

本書で紹介する3人の若者起業家も、様々な経緯を経て好きな仕事を追求していったら、自然と起業という形になったという点で共通している。

 

彼らが成功しているのは、世の中で求められる卓越した専門性があったこともあるが、それよりも起業ありきではなく、好きな仲間と好きな仕事が先にあったことがポイントだろう。

 

現代の若者のトレンドを探る意味で、私も古市憲寿氏の著書には注目している。若者の生き方、考え方を代表すると言われている著者の代表作として、多くの世代の方々に本書を推薦したい。