書評ブログ

バカにならない「読書術」とは?

読書は、それだけで知的な活動であり、思考力を付けたり多様性が学べるなど、積極的な評価がなされることが多い。ところがベストセラー 『バカの壁』 の著者である養老孟司さんにかかると、「バカになる読書」があると言う。

ということで、本日の推薦書はそのものずばりのタイトルのこちらの書。

 

養老孟司 『バカにならない読書術』 (朝日新書)

 

この本は、前半の第一部が 「養老孟司」 流の本の読み方で、冒頭に書かれている 「読み聞かせと子どもの脳」 は必読の内容です。詳しくは、この本を楽しみに読んでいただいた方がいいと思いますが、「知育」、「徳育」、「体育」 の三つで子どもは成長していく、という意味がよく分かります。

 

とくに、「知育」 が 「入力」「徳育」 が 「演算」「体育」 が 「出力」 という説明は、説得力があります。子どもには、入力である読書や勉強だけでなく、出力である外遊びが、脳の発達にとって極めて重要だ、というお話です。

 

その後に、日本語の特性と脳の使い方といった話や、唯我独尊としての読書、さらに 「バカの壁」 を超える読書、と興味深い話が続いています。

 

後半の第二部は、養老孟司さんと、虫仲間の生物学者である池田清彦さん、ノンフィクション作家の吉岡忍さんの3人による鼎談で、テーマは 「バカにならないための本選び」 です。以下のテーマで各人三冊ずつの書を推薦しています。

 

1.米国がわかる本
2.価値観を変える本
3.科学を楽しむ本
4.ミステリー本
5.森鴎外と夏目漱石
6.勝手にノーベル文学賞
7.手にしたい旅行記

 

その他、伝記、哲学本、マンガ、時代小説、詩や写真集など、幅広いジャンルの推薦書を出し合っています。

 

この本は全体として、読書の素晴らしさを伝えているのですが、「読みさえすればいい」 という考え方とは一線を画しています。むしろ、運動したり、本を離れて自分の頭で考えたり、脳の活動によいことを併せて行うことを、いろんな角度から理論的に説いているところがユニークです。

 

後半に3人が挙げている推薦書は、私が読んでいる本とはジャンルが大きく異なり、このブログで紹介する書とは殆ど重なりませんが、それでも読書に関する考え方は、共感できるものがあります。

 

今後日本は少子高齢化が急速に進み、増え続ける高齢者人口を考えると。認知症や脳の活動、読書との関連が、世間の大きな関心になっていくでしょう。そうしたテーマを考えていく上でもこの本は有益です。

 

では、今日もハッピーな1日を!