書評ブログ

ハイパフォーマー集団が大切にする仕事力

世界No.1のコンサルティング・ファームが大切にしている3つの「仕事力」があります。「人財輩出企業」と呼ばれ、CLO (Chief Learning Officer) 誌による2014年の「ラーニング・エリート企業ランキング」において、世界の名だたる企業200社の中で1位にランクされたアクセンチュアの成長プログラムで重視する力です。

 

今日紹介するのは、アクセンチュアが社内およびクライアント向けのプログラムとして重視している、ハイパフォーマーが共通して持っている特性である「成長の土台」について述べた、こちらの本です。

 

作佐部孝哉『世界No.1コンサルティング・ファームが教える成長のルール』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

この本は、「なぜ、アクセンチュアの社員は成長が早いのか」という疑問に答えている書です。その理由のひとつに、最初の1年でビジネスパーソンとしての土台(心構えや行動特性)を築き上げることがあります。

 

ハイパフォーマーを目指した成長を促す土台となる心構えや行動特性が本書の中で紹介されています。アクセンチュアではハイパフォーマー約8000名の力量を調査して、高い成果を上げる人に共通する因子は大きく以下の3つと結論づけました。

 

1.未来を描く「構想力」
2.多様な人財を活かす「人間関係構築力」
3.成果を出すまでやりきる「実行貫徹力」

 

アクセンチュアでは、この3つの力量を下敷きとして、成長の土台を築いていきます。

 

この本の冒頭で著者は、ここ数年、世界は「VUCA(ブーカ)」の時代と言われていると指摘しています。VUCAとは以下の4つの頭文字を取ったものです。

 

1.Volatility (変動性)
2.Uncertainty (不確実性)
3.Complexity (複雑性)
4.Ambiguity (曖昧性)

 

要するに「先の読めない変化の時代が続いている」ということを表してします。私たちが働く環境は激変しており、「働き方」に大きな影響を及ぼす変化として、次の「4つのトレンド」が重要だとしています。

 

1.デジタル化の進展により、変化の振り幅が大きくなっていること
2.データとリアルの融合
3.グローバル化
4.変化スピードの速さ

 

これら4つのトレンドの中で、とくに第1の「デジタル化」については、これまで議論されてきたIT活用による単なる効率化ではなく、「デジタル化による産業コンバージェンス」(=収束・収斂)、つまりこれまでの産業や業界という垣根や境目がなくなってきている、ということです。

 

そうした中で、ハイパフォーマーは①構想力、②人間関係構築力、③実行貫徹力の3つの力を回していく速さが大切だと説いています。また、忘れてならないのは「Being 」の精神です。

 

Beingとは、「どうあるべきか」という人間性の問題です。「人生の目的は、何かを成し遂げるかではなく、どういう人になるかであり、何かを成し遂げるというのは、そうした人間になるための手段でしかない」という考えです。

 

この本は以下の6部の構成に分かれ、それぞれ分類された項目の中で合計49の「成長のルール」が記されています。

 

1.これからの時代のハイパフォーマー
2.ハイパフォーマーをつくり上げる基本姿勢
3.学ぶ力を磨く成長のルール
4.構想力を磨く成長のルール
5.人間関係構築力を磨く成長のルール
6.実行貫徹力を磨く成長のルール

 

全部で49にわたる「成長ルール」の中で、私がとくに強く共感する「成長ルール」について以下に紹介いたします。

 

1.何が「勝ち」かは自分で決める(=自分自身の評価のモノサシを持つ)
2.セルフハンディキャップを外して考える
3.やりたい場所に自分の旗を立てる(=ナンバーワンとして提供できる価値を考える)
4.やると決めたら、まずは行動する
5.揺るぎない専門性を武器にする

 

6.パレードを見つけて先頭に立つ(=自ら新しい変化の波を作り出す)
7.学び続けるプライドを持つ
8.成長の年輪を刻み続ける
9.まずは自分自身で「私は〇〇の専門家」だと宣言してしまう
10.その道のプロになるために「1万時間」努力する

 

11.自分は〇〇を専門にして、◆◆のために、◇◇という価値を届けます
12.境界を超えて学んでいく
13.茶道の「見立て」で物を見る
14.何気ない日常を「意思決定の場」ととらえる
15.話し方のうまい人を真似る

 

16.プレゼンは自分の想いをできるだけシンプルに相手の心に届ける
17.意見の対立は「問題の再定義」で解決する
18.モノサシを揃える
19.「思考」の速度より「試行」の速度を上げる
20.自分なりの勝てるルーティンを持つ

 

これらの「成長のルール」を見ていると、起業する場合に大切なこととオーバーラップしているのを感じます。とくに、上記の9および11の「成長ルール」は、起業する時にも必須のルールです。

 

会社組織の中で成長して成功していくための力は、独立起業するのに必要な力と同じだということでしょう。

 

組織に頼らず自ら稼ぐという力が、変化の激しい現代社会では求められるということでしょう。そういう意味で、本書は起業を目指す人にもぜひ読んで欲しい一冊です。

 

では、今日もハッピーな1日を!