書評ブログ

『小さな会社のビジョンのつくり方、浸透のさせ方』とは?

本日も昨日に続いて、「小さな会社のブランドづくり」専門家村尾隆介さんの著書を紹介します。今日紹介するのは2015年3月24日に紹介した『小さな会社のブランド戦略』(PHP研究所)姉妹書で、こちらの本です。

 

村尾隆介『小さな会社のビジョンのつくり方、浸透のさせ方』(PHP研究所)

 

この本は、小さな会社に特化した「ブランド戦略」のコンサルティングを全国各地で行い、その地域・業界でキラリと光る会社やお店を誕生させるサポートをしている村井隆介さんの「ノウハウ」を記したものです。

 

村尾さんは、「ブランド戦略」と聞くと、ロゴやデザインを思い浮かべる人が多いが、それは仕事の半分にも満たない、と言います。「デザインよりも文章によるブランドづくりが大切」と、各地の講演会でも述べています。

 

それは、「ビジョン」や「クレド」が明確ではないところでロゴやデザインに着手してもブランドづくりは上手くいかないことが多いからです。

 

土台がしっかりしていない家の屋根を張り替えても、壁を塗り直しても、いい住宅にはならないのと同じことだ、と村尾さんは説きます。いいチームや会社を作るには、目指している頂上(=ゴール)と方向を示し、共有することが大切です。

 

つまり、「ビジョン」と「ビジョンの浸透」が最も重要ということになります。本書はそこをテーマとして、以下の6部構成にて著者の考え方とノウハウを整理して提示しています。

 

 

1.小さな会社のビジョン
2.ビジョンがあることのメリット
3.小さな会社のクレドの必要性
4.ビジョンとクレドを浸透させるアイデア
5.小さな会社のミッションとストーリー
6.小さな会社のコーポレートメッセージ

 

 

まず著者は、ビジョン「なりたい姿」「目指しているもの」「やりたいこと」と定義している。ビジョンのつくり方は、「なりたい姿」や「目指しているもの」を箇条書きに出してみて議論したり、インタビューごっこをして答える経験を何度もするといい、と言います。

 

ビジョンをスラスラと書ける人というのは、普段から会社、社会、業界、時代に対して問題意識を強く持っているということです。但し、ビジョン短いことにこだわるべきだと村尾さんは述べています。

 

なぜならビジョンはつくっただけでは意味がなく、浸透させることが必要だからです。ビジョンは単なる「商品ユーザー」ではなく、「会社自体のファン」を作ります。

 

ファンであれば価格を下げずに買ってもらえるため、「ビジョンがある会社」「ビジョンがない会社」と比べて経常利益が1.76倍であるとTKCの調査(対象:2万社)で明らかになっています。

 

次に村尾さんは「クレド」(=信条)について説明しています。「クレド」とはビジョンを浸透させるための「職場の口癖」「職場で共有すべき仕事観」のことです。

 

「クレド」は「職場のマニュアル」とは違って、「仕事観」がシンプルに示されたものです。リッツカールトンのクレドは有名で、「紳士淑女にお仕えする私たちも紳士淑女です」というものです。このクレドがリッツカールトンの接客サービスを産んでいるのでしょう。

 

本書の後半では、「ミッション」「ストーリー」について紹介されています。「ミッション」とは、ビジョンクレドと共有したいものですが、以下のような使命のことです。

 

 

◆ 自分たちの会社が誕生した理由
◆ 自分たちが事業をやっている訳
◆ 自分たちの会社が成し遂げようとしていること
◆ 自分たちの会社が社会から託されたこと
◆ 自分たちの会社のレーゾンデートル(存在理由)

 

 

通常、ミッションは文章で表現しますが、以下の3段構えの形式をとると効果的だと言います。

 

 

1.会社として感じている問題
2.会社として考えている、その解決方法
3.会社が思い描いている社会、もしくは目標

 

 

そしてミッション文には以下のようなタイトルを付けるのが一般的だと村尾さんは言います。

 

 

◆ 私たち〇〇社が存在する理由
◆ 私たち〇〇社が事業を始めた理由
◆ 私たち〇〇社のレーゾンデートル(存在理由)

 

 

さらにミッション社名に関しては「ストーリー」がある方が共感を得られやすく、「ファンをつくる」ブランディングには効果的です。「商品ではなく、ストーリーを売れ」と言われるゆえんです。

 

最後に本書では、「コーポレートメッセージ」について触れています。「コーポレートメッセージ」ロゴ社名の下に入れてもらうのが原則です。内容は以下のようなものです。

 

 

◆ 誰に対して何をする会社なのか?
◆ 誰の困りごとを解消しているのか?
◆ どんな時に利用すべき会社なのか?
◆ 何を目指し、どこがゴールなのか?

 

 

ビジネスはある意味で、コミュニケーション活動です。実際、ビジネス活動の多くは「伝える」で成り立っています。お客様に伝える、業界に伝える、スタッフに伝える、協力会社に伝える、地域に伝える、社会に伝える、世界に伝える・・・など。

 

要するに、「コーポレートメッセージ」とは、「誰に対して何をしているか」を表したものが最もシンプルな形です。いい会社とは、ビジョンに矛盾がない会社です。

 

皆さんも、本書で提唱するビジョン、クレド、ミッション、ストーリー、コーポレートメッセージを活用し、小さな会社や個人のブランドづくりを目指してみませんか。

 

では、今日もハッピーな1日を!