「なぜ日本の不動産が狙われるのか」― 円安を背景に、外国人投資家・資産家による日本の不動産購入が増えています。マンションからリゾート地、水源地、基地周辺まで広がる外国人所有。その実態をデータで検証しながら、「外国人が悪い」という単純な議論ではなく、日本の制度や不動産市場が抱える問題を明らかにし、共生への道を考える本があります。

本日紹介するのは、東京大学経済学部を卒業後、ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務、その後、J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立、現在はオラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産事業プロデュースを展開し、『負動産地獄』『不動産の教室』『50歳からの不動産』『なぜマンションは高騰しているのか』『新・空き家問題』など多数の著書がある牧野知弘(まきの・ともひろ)さんが著した、こちらの書籍です。

牧野知弘『「外国人不動産」問題』(祥伝社新書)

 

外国人観光客の急増が注目されていますが、本書が焦点を当てるのは「旅行客ではない外国人」です。日本に住み、働き、あるいは投資目的で不動産を所有する外国人が増える中、不動産市場にも大きな変化が起きています。

中国人所有が多いマンションは、業界で「中華まん」と呼ばれることもあり、一部の地域では外国人街のような様相を呈し、生活習慣や管理をめぐるトラブルも起きています。

一方で著者が問いかけるのは、「はたして、悪いのは彼らなのか?」ということです。外国人による不動産取得を感情的に捉えるだけでは、問題の本質は見えてきません。なぜ日本の不動産が海外から見て魅力的なのか。なぜ外国人による購入が増えているのか。

そして、日本の法制度や不動産政策には、どのような課題があるのか。不動産ビジネスの現場を知り尽くした著者が、データと実態をもとに考察しています。

本書は以下の6部構成から成っています。

1.激増する在留外国人

2.”中華まん〟の実態

3.なぜ日本の不動産に殺到するのか

4.水源地、基地周辺まで買い漁る

5.日本政府と各党の外国人政策

6.私が提案する解決策

 

本書の前半では、外国人による日本の不動産取得の実態について、以下のポイントを説明しています。

◆ 日本で暮らす在留外国人が増えている

◆ 外国人によるマンション購入も拡大している

◆ 円安で日本の不動産は割安に映る

◆ 外国人所有が集中するマンションも登場している

◆ 生活習慣や管理をめぐる摩擦も生じている

 

この本の中盤では、なぜ日本の不動産が外国人から狙われるのかについて解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 日本では外国人も不動産を取得しやすい

◆ 東京などの不動産は海外主要都市と比べ魅力がある

◆ 投資だけでなく移住や資産保全の需要もある

◆ リゾート地や地方にも購入が広がっている

◆ 水源地や基地周辺の土地取得には安全保障上の論点もある

 

本書の後半では、外国人不動産問題への対応について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 外国人排斥だけでは問題は解決しない

◆ 不動産取得の実態を正確に把握する仕組みが必要になる

◆ 安全保障上重要な土地には適切なルールを設ける

◆ 地域社会との共生を促す制度づくりが求められる

◆ 外国人を受け入れる長期的な国家戦略が必要になる

 

本書を読んで最も印象に残ったのは、外国人による不動産取得を「外国人対日本人」という構図だけで捉えていない点です。円安、不動産価格、人口減少、空き家問題、安全保障、外国人政策など、複数の問題が重なっています。

外国人が日本の不動産を購入するのは、日本の不動産市場が海外に開かれ、その価格や制度に魅力があるからでもあります。
だからこそ必要なのは、感情的な排斥ではなく、「どこまで自由な取引を認め、どこからルールを設けるのか」という冷静な議論でしょう。

人口減少が進む日本にとって、外国人との共生は避けて通れない課題です。「外国人不動産」問題は、不動産だけの問題ではなく、これから日本が外国人とどう共生していくのかという国家戦略の問題でもある。

外国人による不動産取得の実態から、人口減少時代の日本社会の未来を考えるうえで、参考になる一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4234日目】